2017 Fiscal Year Research-status Report
出稼ぎトンネル坑夫集団「豊後どっこ」にみるアジア近現代開発史研究
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17K18510
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷川 竜一 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (10396913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 正明 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (90372549)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 豊後土工 / 戦後賠償 / 植民地 / トンネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、基礎調査を行いながら、そのなかで多くの新情報を得ることができた上、現地調査先で新発見もあった。なおかつ成果報告も出すことができた。研究は大変充実して進行している。これまでの具体的な成果は、以下の三点である。 一点目は大分県旧南海部郡に在住ないし同地出身の豊後土工に対するインタビュー調査で、多くの成果を得たことである。旧南海部郡において、8月にインタビュー調査を行い、10人以上の豊後土工やその家族らの記憶を記録するとともに、写真や史料を収集することができた。一方、10月には旧南海部郡を出て他の都市に住む豊後土工にもインタビューを行い、特に戦後賠償工事に関する古写真や工事履歴その他の具体的な史料や情報を得ることができた。また電話などでのインタビューも行った。 二点目は東南アジアにおける豊後土工の足跡踏査で、遺構を含め当時の工事状況の把握を行うことができたことである。特に一点目の成果を分析した上で、インドネシアのネヤマトンネル、カランカテスダムなどを踏査した。現地の状況や当時の遺構などを確認するとともに、工事における豊後土工たちの生活に関する情報などを得ることができた。また、賠償工事中に亡くなった方々の慰霊碑などが今も建っていることを確認することができた。 三点目は戦後賠償工事の歴史的な背景やその経緯、現地側への影響などを考察した論文を執筆したことである。特に日本による戦後賠償工事の第一号であるバルーチャン水力発電所の建設に関与した現地側技術者への聞き取りをまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外における現地調査、インタビュー、成果のとりまとめなど、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の調査で、インタビュー調査の候補者をさらに増やすことができた。昨年度同様の方針で調査を進めるとともに、特にインドネシア賠償の分析に力を入れて、研究を進める。
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Causes of Carryover |
大分県旧南海部郡でのインタビューや資料調査を優先的に進めるなかで、予想以上の情報を得ることができた上、調査すべきインタビューイーを新たに見つけることができた。彼らが高齢のためにそちらのインタビューなどを急ぐこととし、多くの時間を割くこととなったため、1回分の海外調査を次年度に回した。また、インドネシア調査での現地側コーディネーターの代金を、代表者や分担者らが築いてきた人的ネットワークをいかすことで、予想以上に低価格で依頼することができた。 以上の理由などから資金を繰り越すこととなったが、前年度できなかった調査を次年度できるだけ早く行うスケジュールを分担者らと現在立てている。こうした計画変更で臨機応変に対応できており、資金的にも順調に進展していると考えている。
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Research Products
(2 results)