2021 Fiscal Year Research-status Report
出稼ぎトンネル坑夫集団「豊後どっこ」にみるアジア近現代開発史研究
Project/Area Number |
17K18510
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷川 竜一 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (10396913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 正明 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (90372549)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | トンネル / 植民地開発 / 豊後土工 / 戦後賠償 / 出稼ぎ / 土木史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本・アジアの近代化において極めて重要な役割を果たしたにもかかわらず、特殊な労働を担う存在であったためにこれまで知られてこなかった、大分県・旧南海部郡(現・佐伯市周辺)の出稼ぎトンネル坑夫集団「豊後土工(豊後どっこ)」の活動解明を目的としている。 豊後土工を考察するなかで、整理されていった申請者の研究視角としては、次の5つがある。それぞれ、1)豊後土工を育んだ旧南海部郡の環境・歴史、2)戦前日本の近代化、3)アジア植民地開発、4)戦後高度成長、5)アジア賠償・援助である。これらについて期間を延長しながら研究を進めてきた。特に本年度においては日本トンネル専門工事業協会から研究協力をして頂けることになり、複数のインタビューなど行うことができた。ただし、それでもコロナ禍の影響は深刻で、高齢の豊後土工へのインタビューや現地調査を自粛・延期したりせざるを得なかった。そのため昨年度も一昨年同様に研究方針を修正し、資料の収集やすでに集めた資料の考察に力を入れ、成果発表を進めた。 ただし、全く調査ができなかったわけではなく、三重県内の歴史的な灌漑水路工事や名神高速の重要トンネルである天王山トンネルなどに関与した豊後土工についてインタビューや資料収集を行うことができた。学術成果としては、『土木史研究講演集』への論文投稿や研究発表(上記(1)や(2)に関する成果)や、2020年度の国際シンポジウムでの発表抄録掲載((3)~(5)に関する成果)などを通じて、研究成果を発信することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍により高齢の豊後土工へのインタビュー自体がかなり難しいことに加え、現地調査も日程変更や延期を迫られることとなった。そのため計画を軌道修正し、本年度の行おうと思っていた調査のいくつかを次年度(2022年度)に調査を先延ばしし、そのための下準備を念入りに行った。また資料の収集分析に本年度も力を入れて研究の進展や成果還元を進めたが、予定していた対象に関する調査・研究を十分遂行できなかった点は否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
豊後土工の国内・海外での活動の展開について、より調査の実施可能性の高い国内調査に引き続き力点を置いて研究を進める予定である。 具体的には、2022年度に協力を得ることのできた日本トンネル専門工事業協会に助力を得ながら、タイミングを見つつ調査を展開する。特に豊後土工の歴史のなかで指折りの巨大プロジェクトの一つと考えられる青函トンネルなどを中心に本年は研究を進め、最終成果をまとめたい。コロナ禍のなかでタイミングを図りつつ、現地での協力者の助力を得ながらうまく調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のなかで計画していたインタビューや現地調査が不可能となったために、それらを次年度に延期した。その予算を次年度に残したため。
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Research Products
(3 results)