2018 Fiscal Year Research-status Report
錦からみる学際融合研究‐織物のマルチ・ディメンショナル・研究の確立‐
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17K18512
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 謙 大阪大学, 総合学術博物館, 特任講師(常勤) (00619281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 慶久 大阪大学, 工学研究科, 特任教授(常勤) (70575414)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 錦 / 織物 / フィールドワーク / シルクロード / 博物学 / 色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から継続して一般財団法人日本伝統織物研究所において調査を行い、糸見本および所蔵される錦資料の詳細についての把握を実施した。龍村家における過去の錦の制作状況や現在制作されている錦の情報を把握した。歴史的検証に基づき、錦の様式・生産・流通状況などの情報収集を行った。次に、国内の博物館をはじめとする専門機関に所蔵されている、錦の資料および古文献を主に解析を実施し、錦についての市場の情報など技術保護への認識や実態の把握に努めた。具体的には、一般財団法人日本伝統織物研究所の所蔵資料ならびに平山郁夫シルクロード美術館が所蔵する錦資料の調査を実施した。特に、平山郁夫シルクロード美術館から提供頂いた8世紀前後のウイグル王族の墳墓から出土した錦資料についての研究を継続した。加えて、国外の美術館や考古学研究施設などで保管される錦の資料を鑑別し、日本に蓄積されている資料群と照合対比し、どのような技術の変遷をたどってきたのかを考察した。今年度は、イタリアおよび中国新疆ウイグル自治区でのフィールドワークを実施した。加えて、ペルージャ大学およびピサ大学に本学理学研究科の修士学生を6か月間(2018年10月~2019年3月)留学させ、錦に関連する国際共同研究を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平山郁夫シルクロード美術館からは、8世紀前後のウイグル王族の墳墓から出土した錦資料や龍村家所蔵の錦関連資料などの研究を、本学理学研究科の学生のペルージャ大学およびピサ大学への派遣という形(本学からの別予算を取得した)で前に進めることができた。これにより、既に一定の成果を得ており、論文や学会発表などの形で公表していく予定である。また、アジア有数の美術館である国立故宮博物院との共同研究を実施し得る足掛かりを形成することができたことも今後の発展に大きく寄与すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①過去2か年実施してきた国内外でのフィールドワークを継続的に実施する。 ②錦資料のマテリアルプロファイルと分析化学を駆使したデータベースの構築 a. 錦資料のマテリアルプロファイルおよびその新規学術的分析手法の構築:本研究では、原料である絹糸の品種と糸染めについての基礎的データを収集する。これらの技術の確立には、申請者が連携を有する、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど世界的に著名な作品群を対象とした非破壊分析技術を確立してきた欧州の文化財科学分析技術の第一人者であるB.Brunetti 教授(ペルージャ大学、イタリア)の助言を継続的に受ける予定である。また資料については、国内外の機関や収集家から提供を受ける予定である。 b. 錦の組織に対する分析化学を駆使した科学的データの構築:錦の織り方には多様な手法が存在する。そのため、それぞれに立体構造は大きく異なる。錦の織り方の変遷は、平組織経錦→平組織緯錦→綾組織経錦や綾組織緯錦へと発展したことが知られているが、それらの構造は布全体において不均一であるケースも存在している。そこで、組織の立体構造を把握する目的で、偏光顕微鏡などを用いた観察を行い、組織の全体構造を把握した上で、それらの構造を3Dデータで構築することを継続的に試みる。 ③研究成果の公表を展覧会の形で実施する。具体的には、ローマ日本文化会館にて、国際交流基金、ペルージャ大学、ミラノ大学などと協力して展覧会を実施する予定である(2020年1月~3月を予定)。
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Causes of Carryover |
予定していたフィールドワークについて他の研究機関との共同調査となり本科研費以外の研究資金を活用できたこと、2019年度における研究資料の購入費用や研究成果のアウトリーチのための展覧会を実施するための費用を確保するために、このような結果となった。
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Research Products
(2 results)