2017 Fiscal Year Research-status Report
Integrating paleoclimate data with rice yields estimated from historical documents during the early modern period in Japan
Project/Area Number |
17K18517
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐野 雅規 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (60584901)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌谷 かおる 総合地球環境学研究所, 研究部, 特任助教 (20532899)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 気候変動 / 米収量 / 近世日本 / 社会応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
古気候データの地理的な分布を拡充するため、富山県で採取した年輪サンプルの分析を行った。このサンプルは年輪数が500年を超えており近世の全期間をカバーしている。今年度は、過去150年間を対象として年輪セルロースの酸素同位体比を測定した。気象観測データとの対比から、年輪の酸素同位体比が夏季の降水量や相対湿度を反映して変動していることが分かった。 他方、近世の米収量の復元のため、今年度は年貢割付状の収集に集中して取り組んだ。具体的には、国立国文学研究資料館や、愛西市八開庁舎、茨城県立歴史館等で調査を実施し、複数の地域(茨城県/愛知県/東京都/長野県/静岡県)で記された年貢割付状を対象として写真撮影をおこなった。いずれの地域も長期間にわたって残高などの米収量に関わる情報が記録されていたため、古気候データとの比較に適した良質な史料を取得することができた。さらに、これまで重点的に分析を進めてきた琵琶湖岸地域について、新たに3カ所の村の年貢割付状を調査し、さらなる詳細な分析のためにデータを増やした。 上記に加え、これまで収集してきた気候と米収量の復元データを対比して、米収量に及ぼす気候の影響を評価した。例えば、愛知県川北村(現愛知県愛西市川北町)の年貢割付状データを古気候記録と対比した結果、大雨による木曽川の氾濫によって川北村の水田が水没し、収量が落ちていたことを突き止めた。さらに、琵琶湖沿岸では、作況を残高で表した上で、税率を残高と連動するように微修正して年貢高を決めていたのに対し、川北村では、残高と税率に連動性はなく、両者の積が作況を表すように調整されて年貢高を決めていたことも分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が2017年度に異動したため研究室の整備に時間を要したが、年輪による古気候復元に関しては、セルロースの抽出や酸素同位体比の測定を進めており、概ね順調にデータを生産できている。他方、年貢割付状による米収量の復元についても、研究分担者が各地の公文書館等で写真撮影を重点的におこない、残高などのデータ入力を着々と進めている。また、すでにデータが揃った地域については、気候データとの比較分析を実施しながら、論文の執筆に向けて下準備をおこなっており、全般的に順調に研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
富山県で採取した年輪サンプルの解析を進め、過去500年超にわたって夏季の降水量・相対湿度を1年単位で復元する。また、2017年度に大量に集めた年貢割付状の写真を解読して、年貢割付状に記載されたデータの入力を進める。次いで、複数地点で取得した古気候復元と米収量の復元データを比較し、気候変動が米収量に及ぼす影響を地域別・時代別に評価する。さらに、関連する史料も活用して、気候変動に対し地域社会がどのように応答したかについて歴史学的に考察する。
|
Causes of Carryover |
年貢割付状の調査許可の取得と写真の撮影に時間を要したため、データ入力のための人件費を次年度に使用することにした。2018年度に研究補助員を雇用して、集中的にデータ入力を進める。
|
Research Products
(5 results)