2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18526
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀 和明 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70373074)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 土石流 / 沖積層 / 完新世 / 養老山地 / 濃尾平野 |
Outline of Annual Research Achievements |
豪雨や地震が多発し,山地の多い日本は土石流による物的・人的被害を頻繁に受けてきた.本研究では,山地と隣接する沖積低地下にみられる沖積層に着目し,過去(完新世)の土石流に関する評価を試みる. 研究対象地域は,濃尾平野西縁を南北に走る養老山地東端に分布する土石流扇状地末端付近とした.今年度は,地形図(旧版地図)や空中写真の判読,現地での地形観察にもとづき,山麓に分布する扇状地の特徴を把握した上で,ボーリング調査に適した地点(小倉谷扇状地末端)を選定した. 小倉谷扇状地と沖積低地の境界付近(標高約1 m)において,掘削長32 mのオールコアボーリングを実施した.採取したコア堆積物については,半裁後,簡単な記載,写真撮影,X線写真撮影,かさ密度の測定,色調測定,泥分含有率測定をおこなった.また,堆積物から有機物や貝殻片など年代測定用試料を採取した. コアは深度31.4 m付近で沖積層基底礫層に相当する砂礫層に達していた.また,深度21.3-21.5 m付近の泥の中には火山ガラスがみられ,7300年前頃に噴出したK-Ahと推定された.したがって,コア堆積物は最終氷期最盛期以降,おそらく完新世における海進・海退の過程で堆積したと考えられる.しかし,濃尾平野で広くみられる沖積層に比べると,全般に泥が卓越していた.深度26 m以深の泥には礫の混入がみられたが,その上位においては礫の混入が認められなかった.表層5 mについては泥分含有率や色調などが狭い深度内で大きく変動していることから,掘削地点に砂が到達するようなイベントがあったと推定される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度内にオールコアボーリングを実施できたことにより,扇状地末端付近の沖積層の層相を確認することができ,次年度の掘削地点を決定する際の材料が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度掘削したコア堆積物の解析・分析(とくに放射性炭素年代測定)を進める.また,他の扇状地末端(予定では小倉谷よりも南方(伊勢湾側)に位置する2つの扇状地)においてもオールコアボーリングを実施する.小倉谷のボーリングコア堆積物からは,礫質な土石流堆積物の分布範囲(到達範囲)が狭いことが予想されたため,他の扇状地では掘削地点の選定に留意する.掘削によって得られたコア堆積物については,今年度と同様に,写真撮影や色調・かさ密度・泥分含有率の測定などをおこない,放射性炭素年代測定により堆積時期を決定する.これらの結果をもとにして,沖積層に土石流起源の堆積物が含まれるかどうか,さらに,その発生時期や頻度,規模を検討していきたい.
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Causes of Carryover |
平成30年度に費用のかかるオールコアボーリングを複数地点で実施予定のため,次年度使用額が生じた.平成30年度の助成金と合わせて,オールコアボーリングや放射性炭素年代測定をおこなっていく.
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