2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study on ideology and practice of creative survivor over catastrophes
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17K18528
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 彰 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90199422)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 破局的状況 / 巨大地震 / ケニア / ネパール / 生活世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代世界において、戦争や内乱時のジェノサイドあるいは巨大地震などの自然災害などによって、夥しい数の犠牲者が生まれている。 こうした破局的災厄を経験し生き残った人々は、いったいどのようにして、その災厄を乗り越えていくことができるのだろうか。たんに生の営みを継続し、生活世界を復旧するだけでなく、どのように、よりよい生を創造することができるだろうか。この問いかけに応えるために本研究は、韓国、ネパール、ケニアの破局的災厄のサバイバーの生活世界に依拠して、より充実した生の創造の可能性を検討することを試みた。戦争中、広島と長崎に強制的に徴用され被爆させられた韓国人の元徴用工被爆者の恨のライフヒストリーからは、彼らが故郷に帰還後にどのように助け合い、日本と三菱に対する「補償」を求めて来たのかが明らかになった。彼らが採用した一つの方策は、日本と韓国における「法廷」を通じて奪われた生を取り戻す選択だった。 一方、カトマンズ盆地を襲った巨大地震によって生命、財産、コミュニティを破壊されるという経験を生きてきた人々は、正常な生活への復帰の拠点として、自らの手で簡易コミュニティセンターを建設し、高齢者のケア、女性の自立支援などのコミュニティ活動を自前で組織し始めた。こうした活動実績を活用して、コミュニティセンターへの公的支援の拡充を引き出し、より整備された拠点として新しい公的施設を獲得した。 ケニアにおける度重なる「選挙後暴力」などの政治的暴力の被害を受けてきたナイロビのインフォーマル居住地区の住民は、国際的なあるいは公的な支援ではなく、多様な方策を工夫してつなぎ合わせながら自前のポリシングシステムを創発的に構築し危機に対処するようになった。 このように破局的災厄からの脱出のために、「法」「コミュニティ」と「公的支援」「創発的連帯」など多様な処方箋をサバイバー達が創造していることがわかった。
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Research Products
(8 results)