2017 Fiscal Year Research-status Report
高密度掘削試料の総合的解析による津波堆積物の地層対比手法の確立
Project/Area Number |
17K18532
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
石村 大輔 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (00736225)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 津波堆積物 / 化学分析 / 画像解析 / 放射性炭素年代測定 / 三陸海岸 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、岩手間山田町小谷鳥の津波堆積物試料に対して、ITRAXを用いた化学分析、放射性炭素年代測定、津波堆積物に含まれる礫の画像解析を行った。ITRAXを用いた化学分析と放射性炭素年代測定は、ジオスライサーによって深度5mまで掘削された計5本の連続試料を対象に行った。各地点は20m程度離れており、本研究で目的とする津波堆積物の側方対比の検討に適した試料である。これらのコアに対して、肉眼観察による地層対比と化学分析値に基づく地層対比を行い、最後にそれらの検証のために放射性炭素年代測定を行った。その結果、すでに浅い部分でトレンチ調査や高密度な掘削調査が行われている地点では、肉眼観察による地層対比に問題はなかったが、離れた地点では津波堆積物の対比に問題があることが化学分析値に基づく地層対比を行うことで明らかとなった。その検証として、放射性炭素年代を測定を行ったところ、化学分析値に基づく津波堆積物対比が正しかったことがわかった。しかし、もっとも海側の部分では、大規模な侵食が津波により生じていることも放射性炭素年代測定により明らかになり、地層の側方対比の困難さがより明確となった。ただし、これらのことから肉眼観察、非破壊の化学分析による地層対比を行った上で放射性炭素年代測定を行うことで、より効率の良い(費用も抑えられる)地層対比が可能となることがわかった。 津波堆積物の礫を対象とした画像解析には、2012年に実施されたトレンチ内の津波堆積物と2014年に実施された群列ハンディジオスライサーの津波堆積物を用いた。画像解析の結果、円磨度が津波堆積物に含まれている海岸起源の礫と陸起源の礫を区別するのに適していることがわかった。また、各津波堆積物で円磨度の分布は変化し、過去の津波の様子を反映している可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5本のジオスライサーを用いた地層対比の検証では、肉眼観察、化学分析値、放射性炭素年代を用いた地層対比を試み、本研究の目的である地層対比手法の確立に向けて順調な成果が得られている。当初は成果を期待していなかった津波堆積物の礫の画像解析であるが、各津波堆積物を特徴づけることに成功し、今後の成果が期待できる。また系統的な分析はできていないものの、三陸海岸の試料を用いた分析を上記以外にも進めており、平成30年度以降の調査研究への準備ができている。一方、珪藻や種子に基づく古環境情報については、現在分析が進んでおらず、平成30年度には分析計画を立てる予定である。したがって、現在の進捗状況は(2)に区分した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度の分析で足りない部分の追加調査・分析を年度前半に実施予定である。同時に岩手県山田町小谷鳥以外の地点の試料に対しても、分析を進めていく予定である。特に珪藻や種子を対象とした分析計画を立て、年度内に実施していく予定である。さらには平成29年度成果の取りまとめを行い、論文執筆も進める予定である。
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Research Products
(5 results)