2019 Fiscal Year Research-status Report
Parliament Architecture as Political Space
Project/Area Number |
17K18546
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 信 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (70761419)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 議事堂 / 政治史 / 建築史 / 都市史 / デモ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、政治史を中心に、建築史・都市史を統合した学際的アプローチを採用し、議会政治の中核をなす議事堂、すなわち議場及び関連する政党・議員控室、事務局を含む政治空間の、意匠や配室を介した政治の動態との連関の様態を、他の議事堂との比較を通じて解明するものである。 2019年度は、第一にさらなる史料調査を進めた。たとえばハンガリー調査では、これまで日本側の史料では訪問の事実を証明する公的文書がなかったなか、ハンガリー公文書館で日本の議事堂建築調査が訪れた痕跡を探し当てることができた。 第二に、理論的な検討をさらに進めた。ケンブリッジ大学で3か月にわたり在外研究する機会を得たことから、日本では入手が困難な人文地理学の書籍について網羅的に当たり、すでに用意している政治と空間についての体系的な理論構築をブラッシュアップすることができた。この「政治=空間」の構想は来年度刊行予定の書籍に盛り込まれる予定である。 第三に、地方議会の役割について集中的に分析を行った。当初の予定を超えて議事堂の構想の前駆として地方議会の成立過程に注目する必要を生じているのは、これまでの研究実績報告の通りである。この点につき各都道府県の県議会史や一次史料に当たって、各都道府県レベルの初期議会を網羅的に調査したことで、その多様性と近代日本の公議の「かたち」の形成に果たした役割が明らかになってきた。その成果は予定通り日本政治学会で報告し、貴重なフィードバックも得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目指していた3年目での成果公表は実現できなかったものの、これは公議の実験場としての地方議事堂に注目したことで、作業量と作業順序が当初計画から大きく変更されたことによる。従って研究の進捗としては「順調」、もしくは予想外なかたちで「当初の計画以上に進展」と評価できるのではないかと思う。この研究領域が肥沃であり、萌芽の成長が思いの外早かったというのが実感である。 以上に加え、3か月にわたって在外研究があり、また年度末には予定していた海外学会への参加が不可能になったこともあり、あと1年成長を見守ってから成果の取りまとめをしたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は議事堂に注目してはいるものの、地方議会の前駆過程など新たな挑戦的領域も視野に収めて、いわば近代日本の公議の「かたち」の歴史的形成過程の解明に進んでいる。言うまでもなくその全貌解明は「萌芽」の域を超えており、延長により最終年度となる来年度は議事堂に限定することで成果を取りまとめることを目指す。その先に「開拓」を展望することができることを目指す。
|
Causes of Carryover |
ポジティブな理由としては、海外調査予定であったイギリスに科研費外で派遣されたことで渡航費・滞在費がカバーされたうえ、また海外調査予定であったハンガリーにイギリスから渡航できたために渡航費が浮いた。 ネガティブな理由としては、上記在外研究のために予定していた国内外での調査が進捗しなかったうえ、3月に予定されていた海外学会がコロナ禍のために中止になった。 今後は新型コロナウイルスの感染状況如何にもよるが、史料の取り寄せや成果の取りまとめに集中的に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)