2020 Fiscal Year Research-status Report
Parliament Architecture as Political Space
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17K18546
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐藤 信 東京都立大学, 法学政治学研究科, 准教授 (70761419)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 議事堂 / 政治史 / 建築史 / 都市史 / デモ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、政治史を中心に、建築史・都市史を統合した学際的アプローチを採用し、議会政治の中核をなす議事堂、すなわち議場及び関連する政党・議員控室、事務局を含む政治空間の、意匠や配室を介した政治の動態との連関の様態を、他の議事堂との比較を通じて解明するものである。 2020年度は成果の取りまとめ期間に当たっており、研究会などでの複数回の報告を行いフィードバックを得ながら、本研究の理論的支柱となる「政治=空間」などの諸概念を提起した書籍(『近代日本の統治と空間』東京大学出版会)と、とりわけ大蔵省が議事堂計画を主管した時期の意匠の象徴的側面とコンペ(設計競技)との関係を詳細に論じた論文(「国威と民主―大蔵省主管期の議事堂建築様式をめぐる象徴の相克」『法学会雑誌』61巻2号)を刊行した。本研究課題の成果は別にまとめる予定ではあるものの、専門的に過ぎたり、また貴重かつ重要な資料を紹介する必要があるものについて、先に公にしたものである。とりわけ後者では、これまで建築学会系が設計に算入するための手段であると見られていたコンペについて、議事堂が「民主」の象徴であるという観点から従前から擁護されていたこと、コンペの復活のために建築学会系が「民主」の社会競争の論理を採用したこと、大蔵省系がコンペ当選案を換骨奪胎したことで下田菊太郎案の非制度的嵌入を招いたことなどを明らかにした。 上記の業績のほか、COVID-19の感染拡大という状況下で「密」と政治との関係性を政治=空間から捉える論考(「密と政治」『UP』49巻11号)も刊行することで、研究成果の社会還流を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記記載の通り、研究成果の公表は順調に進んでいる。 当初目指したすべての成果取りまとめには至っていないとはいえ、これは「今後の研究の推進方策」に記載の通りCOVID-19の感染拡大による致し方ない事情に伴うものであり、その分「密と政治」といったテーマに取り組むことができたことを考え併せれば、「おおむね順調」、ないし「当初の計画以上に進展」と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本来ならば2020年度に成果の取りまとめを行う予定であったが、COVID-19の感染拡大に伴い、必要な国内外の資料調査が不可能となったことにより、これを実現することができなかった。現下の世界的な感染状況に鑑みて2021年度も海外資料調査は断念せざるをえないであろう。 それでも前年度の本欄記載の通り、本研究は議事堂研究を越えて近代日本の公議の「かたち」の歴史的形成過程の解明に進んでいる。無論、その全貌解明は「萌芽」の域を超えるのであるが、先に「開拓」を展望するためにも、まずは議事堂に限定して成果を取りまとめることは不可欠である。海外資料調査抜きでも成果の公表には十分な研究が蓄積されていることから、2021年度中に成果公表の目処を付けたいと考えている。 もっとも、現在のところ国内の感染状況・史料の閲覧状況も厳しいことから、資料調査以外の部分で分析をさらに深化させるなど(たとえば米国の議事堂襲撃の事例などもあり、比較の視座はより重要になっている)、適時適切に研究の方向性や成果公表の時期を判断しなければならないことはもちろんである。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大に伴い、予定していた国内外の資料調査が実施不可能となったことによる。 今後は感染状況を見ながら、可能なものについては当初計画通りに使用する。ただし、海外での資料調査は絶望的であるほか、場合によっては国内の資料調査すら難しいことも考えられることから、図書や資料によって必要な情報を最大限埋め合わせるほか、成果の公表により重点を置くことも検討したい。
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