2017 Fiscal Year Research-status Report
ミクロ経済学と完全に整合的な交通需要予測モデルの開発と費用便益分析への応用
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17K18560
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
城所 幸弘 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90283811)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 空港 / 混雑料金 / 収支均衡 / 兼業 / 独立採算 |
Outline of Annual Research Achievements |
交通需要予測体系は、交通需要のみに着目している。しかし、現実には、空港、駅には商業施設が集積しており、商業施設と交通需要の間には相互依存関係があると考えられる。例えば、交通需要が大きい駅には、その需要を取り込むための大規模な商業施設が建設される。一方、大規模な商業施設がある駅には、その商業施設に行くための交通需要が発生する。このように考えると、ミクロ経済学と完全に整合的な交通需要予測モデルの開発には、兼業の分析が不可欠である。 本年度は、空港を例にとり、兼業を明示的に考慮したモデルを開発した。本年度に開発したモデルは、空港が離発着サービスという本業以外に、駐車場、商業ビル等の兼業部門を所有していることを明示的に考慮している。(兼業部門は不完全競争であってもよい。)また、旅客需要と兼業需要の相互依存関係を考慮しており、本業、兼業の両方を考慮している。空港を利用する旅客需要は、空港料金だけでなく、空港の兼業部門の価格水準、空港の兼業部門の価格水準と関連する、市中の財の価格水準に影響を受ける。したがって、空港需要は、ミクロ経済学と完全に整合的に発生する。この空港需要モデルは、既存文献における恣意的な空港需要と兼業需要の関係からの重要な発展である。また、開発した空港需要モデルの一つの応用例として、空港が独立採算でいられる条件を分析した。この空港需要モデルとその応用例は、国際的に高い評価を受け、Transportation Research Part A誌に掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界の空港の商業施設、日本の駅内の商業施設の存在により、兼業の存在と交通需要の相互依存関係という新しい着想を得た。今後は、兼業を考慮し、かつ、ミクロ経済学と完全に整合的な交通需要モデルの開発に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、より現実的な交通需要予測を可能にするために、交通事業に対する規制政策に焦点を当てる。交通事業に対しては、何らかの規制が導入されることがほとんどであり、規制は、交通サービスの価格と混雑等のサービスの質を変えるため、規制政策を考慮しない交通需要モデルは現実と大きく乖離する可能性がある。分析の対象となる規制は、現実に行われている、プライスキャップ規制、総括原価主義等である。平成29年度の成果を取り入れ、兼業の存在を明示的に考慮した規制政策モデルを開発する。平成30年度の成果により、規制政策、兼業の2つの視点を考慮しつつ、ミクロ経済理論と完全に整合的な交通需要モデルを完成させる。
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Causes of Carryover |
本研究に必要な物品費、旅費を大学交付の予算で賄ったため、繰り越し分が生じた。繰り越した予算は、平成30年度の国際学会参加費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)