2018 Fiscal Year Research-status Report
Towards experimental history
Project/Area Number |
17K18570
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
齊藤 健太郎 京都産業大学, 経済学部, 教授 (10387988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 艶 京都産業大学, 経済学部, 講師 (00755796) [Withdrawn]
小田 秀典 京都産業大学, 経済学部, 教授 (40224240)
山内 太 京都産業大学, 経済学部, 教授 (70271856)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 実験 / 歴史学 / 労働争議 / 日本 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「実験歴史学の構築に向けて」は、歴史研究に社会科学の成果である経済学実験の手法を取り入れることを目指している。そのために、実験と歴史を結びつける方法を構築すること、実験歴史学を計画・実施・評価するための一連の具体的な手続きを確定すること、各国・地域における社会経済的制度の形成について試験的な実験を行うことを目的としている。本年度は前年度に行った経済学実験の結果を分析・検討するとともに、歴史実験を構築するためのデータ収集と入力を行った。 前年度、小田秀典(研究分担者)を中心に行った試験的な実験であるタカ・ハトゲーム結果を拠点校(京都産業大学経済学部)において、数回の研究会を通じて分析し、歴史学実験を行うため、歴史事象から抽出したモデルを作成するための諸条件を検討した。 その結果、タカ・ハトゲームを近世および近代史における争議のためのモデルとすることとし、齊藤健太郎(研究代表者)は19世紀末から20世紀初頭のイギリスにおける争議資料調査のためにイギリス出張を行った。労働組合及び企業連合による資料をウォーリック大学近代資料センター Modern Record Centreで、政府資料を国公文書館において調査した。前者の資料が多量であったため、2回にわたる資料収集(撮影)を行ったほか、歴史研究の文献的資料を収集した。また、山内太(研究分担者)は近世期における百姓一揆情報のデータを継続して作成している。具体的には、青木虹二『百姓一揆の年次研究』(新生社1966年)に記載された内容をもとに、藩名、地域名、一揆の原因・要求、一揆の形態等の情報をデータベース化している。全体の約八割が終了している状況である。このデータベース完成の暁には、日本史における歴史実験のための基礎的情報提供を行い、歴史実験を行う。また、日本の文書館・図書館等においても、資料調査および収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、昨年度に行った実験の結果をもとに、歴史実験を行うためのデータ収集および、モデル構築のための検討を行った。齊藤は争議資料収集の調査と歴史研究の文献的資料を収集するため2回のイギリス出張を行った。山内は、近世日本の争議データの調査及び入力を行った。 進捗状況を「やや遅れている」とした理由を、第1に研究が「おくれている」点について、第2にそれが「やや」であった点について述べる。まず、これらの過程を「遅れている」としたのは、データ収集と入力などの作業に時間がかかり、実験モデルを作成し、今年度は歴史学実験をすることができなかったからである。次に、その遅れが「やや」であったのは、実験をすることはできなかったが、資料収集を通じて、日本の近世およびイギリスの近代の争議についての分析を進め、データベース化する過程が確実に進行しているからである。また、歴史学実験の基礎となる様々な歴史学の枠組みに関する整理も進めている。以上の諸点から、進捗状況につき上記のように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
上の「現在までの進捗状況」で示したように、今後の研究の推進方策として以下の3点を考えている。第1に、進行中の争議データの分析と入力を完了し、歴史実験を行うための実験モデルを構築する。特に、争議発生率が変化する時期・内容を実験可能な形で数値化する。争議発生率の計算には、争議内容の分類を行い、それを全争議数で除することによって得ることを検討している。これは次年度上半期7月までに完成する計画である。第2に、上記のようにして作られた歴史実験モデルをもとに、実際の歴史学実験を遂行する。これは、タカ・ハトゲームをもとにこれを修正した実験であり、日本(京都産業大学)および、外国の大学で実験する。引き続き、実験施設を有する中国の大学での実験を9月に行う計画である。第3に、以上の計画のために、今年度同様、年3回程度の研究会開催を通じて、それぞれの進捗を確認し、研究内容の検討を行う。また年度末には学会発表および関連研究者を招聘しての小コンファレンスを計画している。
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Causes of Carryover |
今年度は昨年行った経済学実験をもとに、歴史学実験を行う予定であったが、経済学実験の結果分析に予想していた以上の時間がかかった。また、歴史学実験の理論的基礎である歴史学のフレームワーク整理とデータの収集およびその入力によるデータベースの構築に関しても、予想以上の時間がかかり、経済学実験への移行が遅れた。そのために、本研究計画において最も大きな予算使用を計画している実験を進めることができず、計画を延長し、次年度使用とすることにした。
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