2018 Fiscal Year Research-status Report
地場企業家ベースのBOPビジネス新戦略:ダイナミック・モデルと産学連携の新機軸
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17K18574
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小井川 広志 関西大学, 商学部, 教授 (50247615)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | BOPビジネス / 企業家精神 / エスノグラフィック・マーケティング / プランテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、途上国BOP層(Base of the Pyramid層、途上国の中でも低所得層を指す)の生活実態を把握すると共に、BOP層の潜在的ニーズを掘り起こし、それに対するビジネス展開の構築を目指すものである。初年度にあたる昨年度は、中国甘粛省景泰県での現地調査の実施を優先し、先行研究サーベイや理論モデル構築作業を後回しにしていた。本年度はそのフォーローに充てると共に、新たにマレーシアにおけるBOPビジネス展開の可能性を探るべく、現地にてBOP農村の現地調査を敢行した。 これまでのBOPビジネス研究は、実際にBOPビジネスを行っている民間企業を対象に聞き取り調査を行い、そこから何らかのインプリケーションを得るというトップダウン型のアプローチが主であった。これに対して、本研究プロジェクトは別のアプローチを採用した。すなわち、民間企業と窓口にせず、農村におけるBOP農民からの聞き取り調査を出発点に、そこからどのようなBOPビジネスの構築が可能かを構想するボトムアップ型の手法を取り入れた。本研究では、雇用機会の創出につながるBOPビジネスの可能性を模索していったが、その結果、プランテーションにおける余剰電力を利用した近代的農業生産がBOPビジネスになりうるヒントを得た。 なお、年度後半からは在外研修のためにイギリスに滞在し別テーマの研究に専念することとなり、本研究実績は2018年度前期の活動を中心に記載したものである。イギリスでは、文献収集、関連分野における研究者との交流などを通じて、本研究の進展に貢献しうる研究活動を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究プロジェクトの初年度において、中国農村部でBOP層調査を敢行できたのは大きな収益であった。BOP層の日常生活の過酷な現実と、その中に芽生えるビジネスチャンスの萌芽を見いだせたことは、実際に現地を訪れたことによる成果であった。このような好調な研究の滑り出しを得たにもかかわらず、2年目は、現地調査先をマレーシアに再展開した以外は大きな研究上の進展はみられなかった。理由は2点ある。一つは、研究者が年度後半以降に在外研修で別の研究テーマに専念してしまったという時間的制約、二つは、BOP層の行動原理を理論的に体系化することに成功していないために、BOPビジネスに関する根本的な理解が不足しているためである。このような反省を踏まえ、研究最終年度には、行動経済学の成果なども積極的に研究の視野に取り入れることなどを通じて、BOPビジネスの理論的深化を図り、かつ、現地調査でのその実証を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上記進捗状況に示したように、本研究は現地調査による実証研究が先行し、これに理論的研究が追いついていかない状況にある。幸いなことに、研究代表者は在外研修としてイギリス・Cambridge大学に滞在中であり、ここでの恵まれた研究環境を活かし、文献収集や関連する分野の研究者と研究交流を進められる余地がある。今年度前期はこの活動に集中し、理論モデルの構築を進めていきたい。年度後半は、その成果を活用して中国への現地調査を再度敢行する計画である。研究の最終年度ということもあり、ここで打ち立てたビジネスモデルを精緻化し、それを産学連携として打診していきたい。
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Research Products
(4 results)