2018 Fiscal Year Research-status Report
アジアの生産財エコシステムの付加価値データベース分析
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17K18575
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
林 隆一 神戸学院大学, 経済学部, 准教授 (10712549)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 付加価値データベース / エコシステム / キーストーン / プラットフォーム・リーダーシップ / 生産財 / 工作機械 / NC |
Outline of Annual Research Achievements |
生産財の「(ビジネス)エコシステム」の「キーストーン種」の戦略が、アジアの生産財企業の付加価値の分布に大きく影響を与えていることを定量・定性的に明らかにする。生産財企業、特にFA(Factory Automation)企業のキーエンス(日本の全上場企業中の時価総額(企業価値)順位12位)やオムロン、NC装置のファナック(同20位)などの分析は遅れている。これらの企業を分析(理解)するためには、当該企業だけでなく、顧客である企業や補完企業を含む「(ビジネス)エコシステム」に加え、調査を行う。各企業取材の検証を踏まえ、生産財産業のアジア全域でのイノベーション・付加価値の流れを示す。 研究計画として、最初にアジアにおける工作機械や産業用ロボット、FA機器などを含む生産財の「エコシステム」の52社の主要企業間の複雑な関係を、財務データ等とヒアリングを踏まえ(製品)物量と付加価値の流れで定量的に推計し『売上・付加価値分配のデータベース』を作成する。『売上・付加価値分配のデータベース』により、生産財産業のサプライチェーンの企業間の売上と付加価値(利益)の移動を、工程毎(金属加工種類毎)から製品毎に関係をモデル化し、「エコシステム」全体を定量的に示す。さらに、『生産性のデータベース』を考慮しつつ、工作機械やロボットのキーパーツであるNC(Numerical Controller)などの視点から『売上・付加価値分配のデータベース』とのマッチングを行う。これにより生産財のアジアを中心とする世界の「エコシステム」の付加価値分布を明らかにする。 これらの分析を踏まえ、日本のFA関連企業や工作機械企業と日本の製造業のエコシステムのフレームワークに関して意見交換し、日本の製造業が付加価値の維持拡大のために必要な戦略立案に貢献したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度は、生産財の「データベース」作成のために、機械企業に加え、生産財の顧客である自動車部品企業などのタイ・インドネシア拠点への取材を行った。 一方、日本の生産財のべ100社強の「エコシステム」の財務情報やIRデータを使用し、定量的に集計した。「切削型工作機械企業」34社・「成形型・射出成形機械企業」18社に加え、「FA企業」46社・「ロボット・マテハン企業」12社の個々の関連部門の売上高・利益などを集計した。「FA企業」の利益が、主要顧客の「切削型工作機械企業」と「成形型・射出成形機械企業」の約5倍に達していることを明らかにした論文を作成した。 さらに、世界の四大工作機械見本市の米国と日本の展示会に出張し、全展示機械(米国710台、日本486台)のNC装置を調査・集計し、世界の工作機械における日本のキーパーツの採用動向の定量動向を論文としてまとめることができた。 上記の状況を踏まえ、3年計画の2年目の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、世界の四大工作機械見本市の米国と日本の展示会のNC装置の調査・集計を終えたため、今年度は残る中国と欧州の展示会でNC装置の調査・集計し、世界全体での分布や各地域の特性などを明らかにする論文を作成する予定である。そのため、中国北京とドイツの展示会への出張を計画している。全世界ベースの展示会での全数NC装置の調査を行うことで、当初計画の想定になかった定量データベースの充実を図る計画である。 これらのデータベースを、日本の生産財企業の主要製品・主要部品毎のシェア・売上・利益の推定定量データをマッチングさせ、顧客・サプライヤーを含む「エコシステム」での各機械企業の『売上・付加価値分配のデータベース』と対照しつつ、生産財のエコシステムの全体像を明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は12万円強、当該年度の所要額の6%弱である。 調査計画の大枠には変更がないが、工作機械の世界4大展示会の調査を進めており、当該年度に米国と日本の調査を完了した。次年度には北京と欧州の海外出張を予定しており、海外旅費関連に充当する予定である。
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