2017 Fiscal Year Research-status Report
国際比較による「過剰消費される祖父母」を超えた世代間関係の可能性に関する実証研究
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17K18584
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
安藤 究 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (80269133)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 祖父母の過剰消費 / 祖父母性(grandparenthood) / 祖父母と孫の関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度は、研究目的の1)「成長した孫との有意味な関係を結んでいる祖父母の事例の国際比較調査」に関しては、日本の状況を確認する事例調査をおこなった。まず、孫が小さな時期に集中的かつ過剰に育児支援エージェントとして動員される「祖父母の過剰消費」という状況が存在することが、幾つかの祖母の聞き取り調査で確認できた。また、成長した孫の側にも聞き取り調査を行い、その祖父母との関係において、やはり「祖父母の過剰消費」の影響の可能性が確認できた。2)「国内の地方自治体における施策」に関しては、自治体が発行する育児支援エージェントとしての祖父母に関する資料は、本研究課題の申請後に既に収集を開始していたが、H29年6月末の採択通知後は、採択後に新たに発行された資料も入手して分析し、自治体での実際の調査項目案を作成し実査の準備をおこなった。こうした調査や準備に加えて、聞き取り調査で得られた質的データの分析を効果的・効率的に行うための準備をし、それとともに、新たに利用可能となった量的なデータの分析で必要となる分析手法の研修を受けた。また申請課題にかかわる文献研究も行った。 今後の研究の展開に関しては、交付申請時にはノルウェーの大都市・地方都市の調査を計画の中心としたが、H30年度以降では、国際比較における調査の実施範囲を交付申請時より拡大していく。これは、北欧の高度な福祉国家の間にも具体的な制度には相違があるため、複数の北欧の国で調査することで、そうした個別の国の制度ではなく、高度な福祉国家であることの影響か否かを検討出来るようにするためである。交付申請時にも北欧ではフィンランド、またポルダーモデルのオランダについては可能性として言及したが、加えてデンマーク・スウェーデンについても実査の可能性を検討し、すべてではなくとも、複数の国での調査を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画より遅れているのは、海外での調査の準備と予備調査である。H28年に募集のあった挑戦的研究(萌芽)はH29年6月末に採択結果が通知され、それをうけて、H30年2月もしくは3月にノルウェーに赴いて予備調査を含めた準備を行う予定であった。しかし、交付申請時には予期していなかったが、当該研究課題の研究代表者が体調不良となり、海外への渡航ができなかった。そのため現地での予備調査を含めた準備が出来ず、当初計画より遅れることとなった。ただし、その間に北欧の調査に関して、交付申請時には挙げることができなかったデンマーク・スウェーデンでの実査が考えられるようになったことは収穫であった。 日本国内での計画に関する進捗状況は、概ね順調である。当該研究課題の研究代表者の勤務地周辺での聞き取り調査に限られるが、「祖父母の過剰消費」の状況が存在することを、祖父母の聞き取り調査でも孫の聞き取り調査でも確認することが出来た。この国内の調査は交付申請時には平成30年度に予定していたが、上で述べたように体調不良となって海外への渡航が難しくなったため、一部の地域のみではあるものの、その代わりとして前倒ししておこなった。その調査の準備のための整理の一部を、H29年に刊行した単著の終章に反映できたのも成果であった。また、子育て支援エージェントとしての祖父母に関する自治体の施策の特徴も、当該研究課題の採択の前後に収集した資料の分析をして、自治体の聞き取り調査の準備とすることが出来た。全体の評価は、以上の点に鑑みてのものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の展開に関しては、H30年度以降、国際比較における調査の実施範囲を交付申請時より拡大していく。概要の箇所でも少し触れたが、交付申請時にはノルウェーの大都市・地方都市の調査を計画の中心としていたが、北欧の高度な福祉国家の間にも具体的な制度には相違があるため、複数の北欧の国で調査することで、そうした個別の国の制度ではなく、高度な福祉国家であることの影響か否かを検討出来るようにするためである。交付申請時にも北欧ではフィンランド、またポルダーモデルのオランダについては可能性として言及していたが、加えてデンマーク・スウェーデンについても可能性を検討し、すべてではなくとも、複数の国での調査を試みる。 また、福祉レジュームの相違が小さな孫と祖父母の関係に及ぼす影響が、累積的に成長した孫と祖父母の関係に与える影響についての理論的な考察については、ライフコース研究の泰斗であるGlen.H.Elder Jr教授、もしくはそのグループの研究者と、可能であれば検討する。 実際の調査は難しいと思われるが、福祉レジュームの相違の影響という観点に鑑みて、国際学会での発表などの機会に、当該テーマに関心を持つアジアの研究者との今後の協働の可能性も探りたい。
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Causes of Carryover |
交付申請時には予期していなかったが、当該研究課題の研究代表者が体調不良となり、予定していたH30年2月もしくは3月のノルウェーに赴いての予備調査を含めた準備を行うことが出来なかったためである。この結果生じた次年度使用額は、ノルウェーもしくは他の北欧諸国での調査に使用する計画である。 当初の次年度予算の使用計画は、国内外の調査にかかわる旅費、通訳などの人件費・謝金、消耗品費、図書や機器(ノートPCを含む)などの必要な設備備品の購入、その他(会議費・複写費など)である。
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