2020 Fiscal Year Research-status Report
国際比較による「過剰消費される祖父母」を超えた世代間関係の可能性に関する実証研究
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17K18584
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
安藤 究 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (80269133)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 祖父母の短期過剰消費 / 祖父母性(grandparenthood) / 祖父母と孫の関係 / 国際比較 / 福祉国家の類型 / 社会保障政策 / ライフコース |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に遅れていたノルウェーの20歳前後の「成長した孫」のパイロット調査が可能となったものの、2020年度は、新型コロナ禍の影響が深刻化する中で、計画していたノルウェー・デンマークの海外調査を断念せざるを得なかった。 ただし、海外調査を実施する予定だった時期に、学会誌からの依頼で、近年の世代間関係に関する研究動向をレビュー論文にまとめることが出来たのは、今後の本研究課題の展開を検討する上では重要な収穫であった。本研究課題応募以降に、grandparenthoodもしくはgrandparentingに関する単行本の研究成果が相次いで出版されたからである。それらの学術書は、本研究課題と異なり、幼い孫との祖父母との関係を考察の中心とする論考が多かったものの、編集における基本的視角は本研究課題と共通するところが多く、今後の展望を得る上では助けとなった。このレビュー論文執筆のために、入手できていなかった雑誌論文も集めることが出来た。 このレビュー論文の内容と、2019年度におこなったノルウェーの「成長した孫」のパイロット調査に対応するように、オンライン上で日本の「成長した孫」に関する調査もおこない、179名の回答を得ることが出来た。構造化された質問項目とともに、自由回答の質問項目も一定程度含んでおり、探索的な性格を持つ本研究課題にとって有益な結果が得られた。 自由回答項目の分析は現在おこなっているところであるが、近年のヨーロッパを中心とした国際比較研究の動向を考えると、分析結果にもとづいて新たに構造化された変数(特にカテゴリー変数)を作成し、国際比較や国際共同研究を射程に収めた調査の実施にも道が開けたのも、2020年度の成果の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していたノルウェー・デンマークの海外調査が実施出来なかったので、全体としては予定より遅れている。ただし、先にも記したように、本研究課題応募以降に公開された論文や学術書を学会誌でレビューして、近年の国際的な研究動向を整理できたことは一つの成果であった。また、コロナ禍のもとで、オンライン上で半構造化・自由回答の質問項目を一定程度含む調査が出来たことも成果の一つであり、したがって、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍で延長を認めて頂いた今年度は、2020年度に実施予定であったノルウェー・デンマーク調査を実施したい。 ただし、新型コロナの影響でこれらの国々に調査研究を目的としての入国が出来ない場合や、入国自体は出来ても、一般の「成長した孫」がいる祖父母に聞き取り調査が実質的に困難な場合には(高齢者が調査対象者であることや、アジア系に対する当該社会のその時点での「雰囲気」などで)、以下の調査を行う予定である。 すなわち、2019年度に実施した、オンライン上でのノルウェーの「成長した孫」のパイロット調査の結果をもとにして、対象者数を増やしたオンライン上での調査を実施する。可能であれば、zoom等のビデオツールも併用して、構造化されていない項目の回答についてdepth interviewを試みたい。 また、2020年度に実施した日本の「成長した孫」調査の自由回答をコーディングしながら、質的分析のみならず、量的分析にもつなげられうような準備を行う。国際比較研究の潮流に鑑み、一定程度のサンプル数を確保して、昨年度の自由回答からカテゴリー変数を作成し、量的変数を用いた分析のみならず、潜在クラス分析が可能となるようにしておくということである。日本だけのデータでも、そうした研究成果を公表することで、国際的な共同研究が可能となる布石としたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、新型コロナ禍のもとで、予定していたノルウェー・デンマークでの海外調査研究が実施できなかったことによる。 今年度の使用計画は、昨年度実施できなかった海外調査研究、国内の調査研究にかかわる旅費、通訳等の人件費が挙げられる。また、今年度の研究計画にも記したように、昨年度までにおこなった自由回答項目の調査よりカテゴリー変数を作成し、国際比較に耐えうるような分析をおこなうため、潜在クラス分析に特化した統計分析ソフトウェアの購入し、およびこれまで使用してきた量的分析、質的分析のためのソフトウェアのヴァージョン・アップをおこなうことも予定している。本研究課題にかかわる雑誌論文・単行本でまだ手元にない資料も入手する。
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Research Products
(1 results)