2021 Fiscal Year Research-status Report
国際比較による「過剰消費される祖父母」を超えた世代間関係の可能性に関する実証研究
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17K18584
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
安藤 究 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (80269133)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 祖父母の過剰消費 / 祖父母性(grandparenthood) / 祖父母と孫の関係 / 祖父母性と福祉国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的1)の「成長した孫との有意味な関係を結んでいる祖父母の事例の国際比較調査」は、新型コロナ禍による移動制限のもとで、予定していたノルウェーでの海外調査は、前年度に引き続き実施が出来なかった。日本国内に関しては、新型コロナ禍による対面的コミュニケーションの制限で、どのような関係性の変化が生じているかについて、予備的な聞き取り調査を非対面的に(電話・オンラインで)おこなうことができた。コロナ禍のもとでの関係性の変化を把握することで、成長した孫との関係が、コロナ禍前の日常においてどのようであったかを捉えられる可能性が見いだされたのは、コロナ禍で研究期間を延長したことによる収穫であった。特に、行動レベルでの変化だけでなく、その変化に対する意味づけや、そうした変化から生じる意識や態度を通して、コロナ禍以前の関係について包括的かつ自覚的に対象者が語ることが可能なケースが決して少ないわけではないことが判明したのは、予想外の成果であった。当該研究課題の設定のときには考えることができなかったアプローチで、新たな方法での国際比較も有効となる可能性も浮かび上がった。 2)「国内の地方自治体における施策」に関しては、自治体が発行する「ガイド」が、県や大きな行政都市だけでなくより小さな単位でも発行されるようになり、それらを入手してテキストの計量分析の準備を行った。これらの「ガイド」によって、日本の次世代育成支援エージェントとしての祖父母という位置づけを、よりその輪郭をはっきりとさせて把握出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に続き、実査直前の段階まで用意できていたノルウェー調査が、新型コロナ禍によって実施出来なかったのは、当研究課題の遅れとなっている。ただし「やや遅れている」としたのは、研究実績の概要でも述べたように、コロナ禍の対面的コミュニケーションの制限があったがゆえに、成長した孫との関係について、回顧的ではあるが調査対象者がその性質についてより包括的に把握して回答するという可能性が出てきたことによる。当研究課題の設定の際には想定していなかったコロナ禍という状況は、当初計画の対面での調査にはマイナスであったが、そのマイナスを最小限としつつ、新たな国際比較の方法の示唆が得られたことは、挑戦的萌芽というカテゴリーとしては収穫として位置づけられると考える。 同様に、大きな単位以外の自治体で発行された祖父母手帳等のガイドブックの入手できたことは、これまでに発行されてきたものも含めて、それらのテキストの計量分析の準備をすることができたため、コロナ禍によって計画は遅れたものの、「やや遅れている」としたもう一つの理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
北欧の調査に関しては、ノルウェー調査に集中して行うことを計画している。2020年2月に所属先で学生交流をおこなった、ノルウェーのフォルケホイスコーレの教員スタッフの協力の下に現地調査を行う。具体的には、「成長した孫」に関しては、当該成人学校の新年度入学生が調査対象者の中心となる。また、「成長した孫を持つ祖父母」については、同様に当該フォルケホイスコーレのスタッフ及び今年度入学生の紹介によって聞き取り調査を行う予定である。 日本の「成長した孫」との関係については、「祖父母の過剰消費」を回避するための施策の手がかりを得るために、新型コロナ禍による対面的コミュニケーションの制限で生じた関係性の変化の認識を中心にして、聞き取り調査を行っていく予定である。また、一般の雑誌等でもこのような対面的コミュニケーションの制限のもとでの世代間関係の変化に関する言説分析が可能なであれは、大宅壮一文庫等の資料でそれを試みたい。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額」が生じた理由は、新型コロナ禍のもとで、2021年度内にノルウェーで予定していた調査が実施できなかったことにある。本研究課題採択の初年度の体調不良で実施出来なかった海外調査は、2018年度・2019年度の当初予定に加える形で調査を行い、延長した2020年度には当初予定に追いつく見込みであった。しかし、2020年度に続いて2021年度も、新型コロナウィルスによる移動制限が生じて、国際比較調査のための渡航ができなかった。 このような理由で生じた次年度使用額は、まず、「今後の研究の推進方策」で述べたノルウェーでの調査にかかわる旅費・通訳などの人件費・謝金で使用する(先に述べたように、先方の想定外の事情で調査が難しくなった場合には、調査地をデンマークもしくはオランダとして実施予定である)。また、英文での論文投稿に際してのproof readingの謝金、消耗品費、図書や機器、その他(会議費・複写費など)で使用する計画である。 図書や複写等で発生する経費は今年度全般にわたっての使用となると思われるが、海外調査は渡航制限が解除されてからの使用となる。
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Research Products
(1 results)