2018 Fiscal Year Research-status Report
The Development of a New Model of Relating to People with Dementia
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17K18596
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
翁 和美 大谷大学, 文学部, 研究員 (10780421)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 認知症患者の看護・介護 / 日常生活世界 / 開放性を担保した「相互了解世界アプローチ」 / コミュニティー概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インタビューを交えた参与観察を通じて、「主体」論として展開されてきた従来の介護論(専門家「主体」の介護論と患者「主体」の「新しい介護」論)から「相互了解世界アプローチ」へと、認知症患者に対する介護モデルを刷新する道筋を示すことを目的としている。 研究代表者は「相互了解世界アプローチ」をA介護施設(仮名)で見出したが、その特質はA介護施設がある社会では正しく理解されず、正当に評価されてはいない。それに対して、B介護施設(仮名)とB介護施設がある社会では「相互了解世界アプローチ」と思われる実践が高く評価されている。研究代表者はそこで2018年9月にパイロット調査を行なった。B介護施設の現在の経営にも関わる創設者の一人にインタビューを行ない、また、許可が得られたB施設内のパブリック・スペースで調査を行なった。 この調査では、入居者を小集団に分けるユニット・ケアと入居者に昔の暮らしを思い起こさせる空間の再現がA介護施設とB介護施設に共通する実践として確認できた。一方、A介護施設は出入りが比較的自由な開放性が担保されている空間であるのに対して、B介護施設は開放性がない空間である点とA介護施設の創設者は施設介護に優位性を見出しているのに対して、B介護施設の創設者の一人は家族介護がベストであると考えている点で大きな違いがあった。そこで研究代表者は、2019年2月から3月の2ヵ月間、A介護施設において参与観察を行なった。介護施設内におけるプライベートとパブリックの関係性ならびに各介護施設がある社会におけるプライベートとパブリックの概念の相違が、開放性の違いと施設介護と家族介護の価値づけの違いを生み、開放性が高く家族介護の上位に価値づけられる施設介護というA介護施設のあり方はその複雑性ゆえに評価されにくいという仮説を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パイロット調査を通じて、B介護施設とB介護施設がある社会に調査協力者を得ることができた上で、研究代表者が最初に「相互了解世界アプローチ」を見出したA介護施設では、A介護施設に属するグループ・ホームでも参与観察をすることができた。つまり、B介護施設では許可が下りていないプライベート・スペースの調査をA介護施設でのプライベート・スペースでの調査で補完することで、B介護施設におけるプライベートとパブリックの関係性ならびにB介護施設がある社会におけるプライベートとパブリックの概念について包括的調査を行なう十分な準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
B介護施設におけるプライベートとパブリックの関係性ならびにB介護施設がある社会におけるプライベートとパブリックの概念について着目する研究を進める。同時に、A介護施設では、A介護施設での就労経験が短い看護従事者や介護従事者ならびに医療従事者が「相互了解世界アプローチ」を継承しているのかどうか、継承している場合は、その継承要件と継承方法について研究を進める。
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Causes of Carryover |
B介護施設内に調査協力者を得るのに時間がかかった。そのため、2018年9月に予定していたB介護施設とB介護施設がある社会に対する本調査は2019年の夏以降に行なう。
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