2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Development of a New Model of Relating to People with Dementia
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17K18596
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
翁 和美 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (10780421)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 相互了解 / 日常生活世界 / 医療の場との接合 / 個別性 / 主体 / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インタビューを交えた参与観察を通じて、「主体」論として展開されてきた従来の介護論から「相互了解世界アプローチ」(以下、「相互了解」と表記)へと認知症患者に対する介護モデルを刷新する道筋を示すことを目的としている。従来の介護論とは専門家「主体」の介護論とそれを乗り越えるように登場した患者「主体」の介護モデルを指す。 外部からのアクセスが常にあり、患者の社交圏が重層する「相互了解」の究極の形では患者は人間の社会的側面を満足させることができる一方で、その基盤となるユニット・ケアと過去の時代空間の再現は「可能な限り住み慣れた地域において継続して生活できる」ことを理念とする地域包括ケアと混同されることで「相互了解」の普及を阻んできた。加えて、ある種の劇場空間的文化が個別性を圧迫しているのではないかという批判も「相互了解」には存在した。 「相互了解」は、主体を攪乱しても個別性を圧迫しない。昨年度、「相互了解」を実践する施設がある地域が持つ時代と歴史の記憶媒体が観光資源にならず民衆の生活と暮らしに密着していることを突き止めたが、さらに周辺地域の類似する記憶媒体を丁寧に調査した結果、この点を傍証する証左を得ることができた。「相互了解」を生み出した地域の生活圏内で、その文化を構成する要素がある部分は重なる一方である部分は異なることで、文化が持つ一方的な類型化を回避し個別性が担保されることが明らかになった。 一方、「相互了解」の発端である医療の場と「日常生活世界」を接合する試みが新たに始まった地域の調査では、医療従事者ではない地元推進者の方がたに話を聞くことができ、近隣周辺地域との文化的異同にこだわりがあると同時に、経験を通して医療が持つ管理と啓蒙の側面について気づきが高い人たちであることも確認できた。現在、推進反対派の人の中に元推進派がおり、次はその人たちに話を聞く予定である。
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