2017 Fiscal Year Research-status Report
Experience and its implications of the installation, management and closure of the inclusive shelter under a catastrophic disaster
Project/Area Number |
17K18598
|
Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
花田 昌宜 (花田昌宣) 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30271456)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒木 邦弘 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (60369832)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 大規模地震 / 避難所 / 災害 / 障害者 / 合理的配慮 / 内部観測 / オーラルデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大規模地震災害下における被災者の避難者支援体制について、2016年4月の熊本地震という事例を検証し、課題を整理することを趣旨とする。特に、地域の障害者を積極的に受入れ、インクルーシブな避難所運営を行った熊本学園大学の事例の評価を、避難所システムを成立させた当事者による内部観察として行い、学際的な研究組織のもとに多面的な調査研究・検証を行うものである。また、障害者や高齢者の地域生活の脱施設化という流れの中で、災害時に福祉施設への入所対応を求めたり、避難所自身が「施設化」する傾向を実証的に検証し、今後の被災者支援のあり方についての提言につなげる。 熊本学園大学避難所の取組の検証は、人、モノ、 組織、情報の観点から、一片のメモまで含む記録およびオーラルデータの整理と分析によって行い、前年度から着手している。避難所運営は災害救助法に基づき設置、運営等が定められているものの、実際の災害下では、運用の範囲、あり方、処遇など実に多様である。本学のような先進事例の検討とそれを可能にした条件を検証するための資料収集も行った。 本学避難所の特質を明確にするために、熊本市内の同規模の避難所および近郊の町村の避難所の運営者・関係者へのヒアリング及び行政機関、外部支援団体への調査を行った結果、熊本地震下で県下に数多く設けられた福祉避難所は、受入れ人数やマッチングの観点からうまく機能しなかったことが明らかになった。 研究メンバーの記憶の再構築をはかり研究会を実施したが、個々人の経験の記憶が曖昧で、事実確定のためには種々のプロセス・ドキュメントによる補正が必要なことが明らかになり、被災者・避難者の面接調査とオーラルデータの収集に大きな示唆を与えるものであることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【記録の入力、データ整理】 熊本学園大学における避難所(2016年4月14日~5月28日まで開設)の運営にあたって残された記録を整理し、目録化とデータ入力を行った。避難所開設時点より、日々の記録、訪問者名簿、困難ケースや医療福祉に関わる記録などや掲示物等にいたるまで保存することに努めており、それらを整理、データ入力を実施。それにより日々変化する状況を把握することができる。 【東北調査】 東日本大震災の経験のヒアリングのため、仙台市市役所被災者支援担当部局や南相馬市障害者支援事業所を訪問し、発災当時の様子ならびにその後の対応について調査した。 【研究会の開催と情報の共有】 研究会を開催し、避難所運営にあたった研究班メンバーの経験を共有した。 【ウェブページの開設】「熊本学園大学災害避難所研究プロジェクト」としてホームページを開設した(http://www3.kumagaku.ac.jp/hinan/)。 昨年7月の採択通知以降に研究に着手したものであり、成果発表については、口頭発表や総説的な発表を除いては、今後行うことにしている。内部観測手法にもとづいて研究メンバーの記憶の再構築をはかり研究会を実施したが、個々人の経験の記憶が実に曖昧であって、事実確定のためには種々のプロセス・ドキュメントによる補正が必要であることがこの段階で明らかになった。このことは被災者・避難者の面接調査とオーラルデータの収集に大きな示唆を与えるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
【記録の入力、データ整理】紙媒体の資料・記録類の整理は、9割がた終えた。今年度は、研究班メンバーや大学に残されている写真の整理を行う。少なくとも3000枚程度は残されている写真の撮影日時、撮影場所、被写体を特定し、避難所運営期間に起きていた出来事を正確に再現する努力を行う。写真のデータはすべてがデジタルデータであるため、メタ情報であるexifの解析によって撮影時刻は確定できる。このデータと紙媒体の記録、運営参加者自身の個人記録などを照合することにより、避難所運営の正確な時系列の分析が可能になる。 【避難者の経験と近隣の避難者支援の経験の調査】昨年度までの資料整理により、熊本学園大学に避難した住民の連絡先の分かる方が100世帯程度判明した。研究倫理上の配慮をおこないつつ、郵送によるアンケート調査ならびに面接調査を行う。避難者たちの経験と運営者の経験を重ねあわせることにより避難所運営の課題と問題点を析出する。また、避難してきた障害者に関しては、グループインタビューなどによるヒアリングを実施する。近隣校区(大江校区、託麻原校区)の被災者支援と避難所運営について、地元自治会、校区社協、消防団等への調査を実施する。あわせて、地元自治体のヒアリングを実施する。 【先進地調査】阪神淡路大震災の経験について、人と防災未来センターへの訪問調査を行うとともに、地震災害対策の先進地である高知市の訪問調査を予定している。 これらに加えて、熊本地震に関しての地元自治体や福祉機関などの報告書、熊本に支援に入った全国の自治体や被災者支援組織の報告書などの記録を収集し、外部記録と本学避難所運営の内部記録を比較検討する。また、社会に公表していくためにさらにホームページの内容の充実をはかる。
|
Causes of Carryover |
本研究は昨年7月の採択通知以降に研究に着手したものであり、調書に4-7月の研究実施予定として記していた資料整理と記録の入力、熊本学園大学の避難所運営の経験の共有と事実経過の確認(内部観測手法に基づく研究メンバーの記憶の再構築)について注力し、東日本大震災の調査を実施した。年度後半に予定していた被災避難者の調査、熊本県下の避難所調査、内閣府をはじめ中央行政機関調査については次年度に実施するように進捗計画を変更した。そのために、被災者・避難者および避難所運営支援者を対象とした郵送によるアンケート調査・面接調査とオーラルデータの収集などに計上していた予算を次年度に使用することにした。その他については計画通りに実施する。
|
Research Products
(10 results)