2020 Fiscal Year Research-status Report
主権者育成を視点とした学校改革の推進―中高一貫カリキュラムの作成を通して―
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17K18638
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
桑原 敏典 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (70294395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 文三 浦和大学, こども学部, 教授 (30231096)
谷田部 玲生 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (30311137)
小山 茂喜 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (10452145)
鴛原 進 愛媛大学, 教育学部, 教授 (30335880)
永田 忠道 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90312199)
釜本 健司 新潟大学, 人文社会科学系, 研究教授 (10435208)
井上 昌善 愛媛大学, 教育学部, 講師 (10824104)
田本 正一 山口大学, 教育学部, 講師 (30808126)
田中 一裕 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (90805946)
紙田 路子 岡山理科大学, 教育学部, 准教授 (00782997)
藤原 孝章 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (70313583)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 主権者教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中等教育段階を一貫した原理に基づいて構成される主権者育成カリキュラムと、その成果を評価するシステムを開発・実践しようとするものである。高等学校だけが注目されがちな主権者教育について、中学校入学から18歳になって高等学校を卒業するまでの系統的なカリキュラムを提案しようとするところが本研究の特質である。具体的には次の4点の課題の達成を目指している。(1)一貫した原理に基づく中等教育段階の主権者育成カリキュラムの提案、(2) 単発の取組ではない、教科の学習と連動した中高の主権者育成プログラムの開発、(3)育てたい資質能力に基づく主権者教育のための評価規準の作成、(4)上記の(1)から(3)の実施による主権者教育を視点とした学校改革の推進、である。 令和2年度については、次のようなプログラムを開発・実践した。第一は、投票の意義を自分の生き方と関連付けて考えさせるプログラムである。高校3年生を対象とした本プログラムでは、自分の生活と政治の関係について、今の自分の生活と理想の生き方を考えながら考察させたうえで、模擬選挙を行なった。模擬選挙では労働問題を争点として複数の候補者から自分が最もよいと考える候補者を選ばせた。投票後に自分の意思決定を振り返らせたうえで、選挙以外の政治参加の方法についても検討させた。 第二は、人の支配と法の支配について、ロールプレイングゲームを用いて実感的に理解させる主権者教育プログラムの開発・実践である。こちらは、中学生から高等学校1年生を対象としており、カードゲームを使って人の支配の問題に気付かせ、ゲームのルールを変えることによって社会の仕組みをどのように改善するかについて見通しを持たせようとするものである。二つのプログラムはいずれも実践を行い、成果について検証を行なった。いずれも学習者から好意的に受けとめられており、一定の成果を挙げることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度には、高等学校におけるプログラムの開発・実践を行った。2018年度は、実施校を拡大し複数の高等学校においてそれぞれ独自の教育プログラムを開発して実践した。また、各地で学校と連携しながら主権者教育を展開しているNPOに対して聞き取り調査等を行った。2019年には、再度、プログラム開発を行うとともに、プログラム開発の中で、実際に主権者教育を行っている団体と連携をし、主権者教育プログラムをより効果的に展開することができた。2020年2月28日に新潟大学において、シンポジウムを行った。テーマは「地域社会と連携した主権者教育とそれを支える教員養成・研修のあり方」である。3年間を通して、高等学校における主権者教育の方法については、地域との連携を中心に多方面から検討を行い、プログラムの開発・実践・検証を行うことができたが、中学校については十分な成果をあげることができていないため、2020年に一年間の延長を行なった。2020年度に、いくつかの実践を行いある程度の成果を得ることはできたが、当初目指していた中学校については、新型コロナ感染症の拡大のため、プログラム開発のための教員との打合せや、実践の機会の確保ができなかった。そのため、やむを得ず再延長を申請することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年間延長した研究期間において、次の三点を中心に研究を展開していく。1)ここまでの3年間で開発したプログラムの成果を整理し、中学校から高等学校を一貫する主権者教育の原理とカリキュラムの編成原理を確立する。2)高等学校の公民科に公共が新設されたことをふまえて、それにつながる中学校における主権者教育プログラムを開発し、実践をし、その成果を検証する。3)中高一貫の主権者教育を支える地域連携のあり方について、その方法原理を明らかにしたうえで提言をまとめる。1では、これまでの研究成果を点検・吟味し、体系化することによって、中等教育段階における主権者教育のあり方を解明する。また、2は、現時点で成果が十分とは言えない中学生を対象とする主権者教育のプログラムを、新学習指導要領の趣旨をふめて開発・実践し、その成果を検証することを通して、1のプログラムにつながる中学校の主権者教育のあり方を明らかにしようとするものである。そして、3において、1と2の成果をふまえ、地域社会と連携をして、開かれた教育課程を具体化する方法を明らかにすることである。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大による緊急事態宣言の発令等により、高等学校に関してはプログラムを開発・実践できたが、中学校に関してはプログラムの構想にとどまり、実践を通した検証ができなかった。そのため、当初目指していた中高一貫のカリキュラムの提案を行うためには、もう一年間期間を延長し、中学校においてもプログラムの実践を行い、研究成果の有効性を検証する必要があると考えたため。プログラムの開発・実践・検証のための予算が必要となるため。
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Research Products
(1 results)