2020 Fiscal Year Research-status Report
支援現場における重症心身障害児の実態把握の精度向上のための脳機能計測法の検証
Project/Area Number |
17K18656
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鈴木 保巳 長崎大学, 教育学部, 教授 (90315565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 信一 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (00346701)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 重症心身障害児 / 実態把握 / 脳機能評価 / 事象関連性変動 / 偏有向コヒーレンス / 神経ネットワーク機能計測 / 行動評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.脳神経ネットワーク機能計測法の適用開始:脳波基礎律動の検討に、事象関連性変動(event-related change:ERC)に加え、皮質の機能的接続性を明示できる偏有向コヒーレンス(partial directed coherence:PDC)解析の適用を開始した。重症心身障害児1名を対象とし、声かけと身体接触による予告後に好きな玩具を呈示する課題時に記録した脳波基礎律動について、予告呈示前後及び玩具呈示後のθ帯域成分を解析した。PDC解析により、予告後に聴覚受容と視覚的注意に関わる皮質の機能的接続性が高まること、玩具呈示後には呈示された玩具の感覚モダリティと関連する皮質領域と注意や感情に関わる皮質領域との間の接続性が高まることを確認した。これにより、皮質の担う局所的役割に加え、認知情報処理の観点から皮質間の機能的関係性の変化を定量的に検討できるため、PDC解析が重症心身障害児の脳機能評価の確度向上に有効であることを示した。
2.重症心身障害児の継続的脳機能評価:教育現場において従来実施してきている重症心身障害児の脳波計測(安静時、玩具呈示時)を継続実施した。発達検査などの行動評価とERC解析による脳機能評価とを照合することで、例えば行動評価では、嗅覚刺激に加え、視覚や聴覚刺激に対する反応が見られる様になっていたが、脳機能評価では聴覚刺激による働きかけがより有効であることなどを確認できた。これらの評価情報を重症心身障害児の教育現場にフィードバックすることで、指導に有効な教材を定量的に検討することができることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
多変量自己回帰モデル(MVAR)に依拠した頭皮上脳波計測法(脳神経ネットワーク機能計測法)適用のための諸要件(同時解析可能な脳波測定部位の数やサンプリング周波数、解析対象とする周波数帯域、MVARのモデル次数、偏有向コヒーレンス(PDC)解析結果の表示方法など)の検討に予想以上の時間を要した。
重症心身障害児の脳波データのPDC解析を開始して適用結果の公表を行ったが、未だ1事例の症例報告にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
オンライン協議を通して共同研究者と密に連携・協働し、脳神経ネットワーク機能計測プログラムによる重症心身障害児の脳波データ解析を進め、論文作成・公表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:コロナウイルス感染症対策によって、ポスター発表を予定していた日本特殊教育学会の大会がオンライン開催となり、支出を予定していた旅費が未使用であった。 使用計画:継続的に実施している重症心身障害児の脳波データ計測のための旅費に使用する。
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Research Products
(2 results)