2017 Fiscal Year Research-status Report
児童の安全知識共創を可能とする「繋げるAI」援用型ピアエデュケーション
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17K18691
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大野 美喜子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 産総研特別研究員 (80715730)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 傷害予防教育 / テクノロジー / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「繋げる人工知能」を用いて、複数の学校で児童が主体的に傷害予防の知識を共有・共創できるピアエデュケーションシステムを開発することである。平成29年度は、①アンケートの作成、②安全授業の実施校の選定、③システムの開発を実施した。アンケートの作成では、現在、健康教育の分野の新しい科学領域として“Implementation Science(実践の科学)”を調査し、生徒の意識変容レベルや事故の経験だけでなく、授業目的に対する到達度、有効性、応用可能性などの質問項目も追加し作成した。授業実施の選定については、東京都豊島区立富士見台小学校および長崎県大村市西大村小学校を本研究の連携校として選定した。富士見台小学校は、西大村小学校に先駆けて、2017年11月~12月に安全授業を実施し、アンケートおよび安全授業を実施し写真とテキストデータを収集した。また埼玉県秩父市役所危機管理課の協力を得て、来年度は、秩父市にある小学校でも実施する予定である。また、秩父市からは、小学校だけでなく、保育所および中学校でも安全授業の実施を検討しており、秩父市第2中学校および秩父市立の全保育園で安全授業を実施し、本研究の拡張展開の可能性を検討することができた。ピアエデュケーションのシステム開発においては、AIを活用して、写真にうつっている物体(例えば、階段やブランコ)を自動で認識し、そのモノに関連して起きる事故(例えば、転落や衝突)を表示させる新しい機能を実装した。2018年3月には、テクノロジーを活用した教育に関する国際学会(Computer Supported Education 2018)に参加し、EduTechやBlended Learningなど本研究に応用可能なフレームワークについて、これらの分野をリードしている研究者と本研究の重要性などを議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、安全授業の実施校の選定に重点的に活動を進めてきた。実施校の選定は、インターナショナル・セーフスクールの認定校を中心に本研究への参加を呼びかけを行った。東京都豊島区立富士見台小学校では、学校との信頼関係を構築し安全授業の実施とシステムに入力するデータを収集することができた。また、埼玉県秩父市からの協力もあり、当初、予定していた小学生を対象とした安全教育だけでなく、保育園や中学校までも巻き込んだ展開へと研究が広がりつつある。 システム開発においては、学校や地域との連携を進める中で、協力者の発案により、申請時に提案した3つの機能(1. 他校のインシデントを参照する機能、2. 他校の予防策を提示する機能、3. 他校の生徒とのコミュニケーション機能)の開発をすすめるだけでなく、新しく写っている写真の物体を認識し、その物体に関連する事故を表示する機能の開発を進めることができた。 平成30年度の安全授業は、富士見台小学校だけでなく、長崎県大村市および埼玉県秩父市で実施する準備がすすみ、複数校から写真とテキストデータを収集する予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、写真とテキストデータの収集を重点的に実施する。具体的には、東京都豊島区立富士見台小学校、長崎県大村市立西大村小学校、埼玉県秩父市立南小学校(予定)で安全授業を実施する予定である。また、安全授業で取り組むための教育コンテンツを充実させるため、収集した事故データにもとづいたイラストを作成する。安全授業実施校では、活用コンテンツで分かりやすかった点・分かりにくかった点などを調査し、教育コンテンツを改良する。秩父市では、保育園や中学校でも安全授業を実施する機会があるため、秩父市役所危機管理課の担当者や学校の先生と協議しながら、他校との学び合いだけでなく、いわゆる縦のつながりを活用した学び合いなども検討したいと考えている。 ピュア・エデュケーションシステム開発では、提案機能の実装を継続する。また今年度は、安全授業で収集したデータを開発システムへ登録しながら、生徒および先生を対象にシステム評価を行い、より使いやすいシステムへ改善する。
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Causes of Carryover |
H29年度は、予定していた学会へ参加する機会がなかったことや、長崎県などの遠方にある学校との打ち合わせは、現地には行かず電話会議などで実施したことで、旅費や人件費などに差が生じた。また教材作成に関しては、現在、学校側と調整中であり、H30年度に追加教材を開発予定である。
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