2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
四本 裕子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80580927)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 声 / 知覚 / 自己主体感 / 不気味の谷 |
Outline of Annual Research Achievements |
発声時に自分が聞く「真の自分の声」には、骨伝導を介した低い音の成分が少なからず含まれているため、「録音した声」と「真の自分の声」は明らかに違って聞こえる。本研究の目的は、この現象を利用して、自分が自分であり、自分の行動は自分の意図に基づくものであるという『自己認識』の性質とその神経相関を解明することである。 平成29年度は、まず、3つの行動実験を行った。実験1ではown voice再現フィルタ比較する行動実験を実施し、それぞれの参加者におけるown voice再現フィルタを選出した。先行研究で用いられたフィルタに加え、ピッチ・ビブラート・抑揚・フィルタの一部もしくは全てを参加者が調整した音声とrecorded voiceのいずれが最もown voiceを再現するかサーストンの一対比較法を用いて算出した。実験の結果、own voice再現フィルタであると支持されたフィルタは参加者間で異なり、own voice知覚においては個人差が非常に大きいことを示した。全ての参加者が納得するような統一的なown voice再現フィルタはないことから、own voice再現にはいずれかのフィルタが必要であることが支持された。実験2では自分の声らしさの評価において運動主体感が影響を与える可能性について検討した。その結果、運動主体感は自分の声らしさ評価に影響を与えないことが示唆された。 実験3では不気味の谷現象の有無について検討した。実験の結果、「親しみやすさ」と「自分の声らしさ」の間には強い正の相関関係がみられ、「不気味さ」と「自分の声らしさ」の間にも同様の関係がみられた。一方で、不気味の谷理論で提唱されたような「親しみやすさ」又は「不気味さ」の急激な減少もしくは増加は観察されなかったことから、不気味の谷現象の存在は支持されなかった。 これらの行動実験の結果をまとめて、国際学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの行動実験をまとめた結果を論文として学術誌に投稿し、現在、マイナーリビジョン中である。また、自分の声の知覚の神経基盤を検証するための脳機能計測実験を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
行動実験の結果を踏まえて、自分の声の知覚の神経基盤を検証するための脳機能計測実験を進める。実験では、行動実験と同様に5つのフィルタ処理をした声を刺激として使用する。ノイズキャンセリングヘッドホンを用いてMRIスキャン中に音声刺激を呈示し、被験者は、それぞれの刺激について「自分の声らしさ」を評定する。被験者数は20名程度を予定している。聴覚野のみならず、前頭葉も含めた全脳解析を行い、「自己」の表象に関係する脳領域を特定する。
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