2018 Fiscal Year Research-status Report
子どもは拡張現実(AR)技術による「本物らしさ」をどのように認識しているのか?
Project/Area Number |
17K18697
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
白井 述 新潟大学, 人文社会科学系, 研究教授 (50554367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊村 知子 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (00552423)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 拡張現実(AR)技術 / 子ども / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の成果から、参加児が実験室内で単独でゲーム課題に取り組む場合に、事前にARによるキャラクターの存在を示唆された参加児は、ゲーム課題を早期に終了させようとしたり、課題実施中に実験室の外の様子を伺ったりといった行動を生じやすいことが示された。こうした行動は、ARキャラクターに対する回避的反応(ARキャラクターと”ふたりきり”で実験室にいることへのネガティブな行動)を反映している可能性がある。2018年度は、ARキャラクターに対する回避的反応について、より直接的な実験によって再検討した。 実験は、通行を妨げるバリアによって2つのエリアに分割された部屋で実施された。2つのエリアを隔てるバリアには、子どもがやっと通れるほどの隙間が2箇所あけられており、それぞれの隙間の床面部分には、ARキャラクターの提示に使用されるマーカー画像が敷かれていた。したがって、参加児がエリア間を移動する場合には、かならず2つのマーカーのいずれか1つの上を跨いで移動する必要があった。また、2つのマーカーのうち、実際にARキャタクターが表示されるのは1つのみで、他方はダミーのマーカーであった。こうした状況で、まず実験者と参加児が実験室の一方のエリアから入室した。実験者は参加児に対して、床面に設置された2つのマーカーのいずれか一方の上に、肉眼では見えない、しかしタブレットを使うと見えるARキャラクターが存在することを示唆した。その後、実際にタブレットを使ってARキャラクターがどちらか一方のマーカーに出現するのを確認した後、参加児は、バリアの隙間を通って今いるエリアとは反対のエリアに移動するよう促された。その結果、ARの出現しない、ダミーのマーカー上を移動経路として選択する子どもの割合が有意に高かった。こうした結果は、ARによって提示されるキャラクターに対して、子どもが回避的な行動を生じうることを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にそった実験計画を着実に遂行できており、また、そうした計画によって得られた実験結果を拡張するような追加実験の準備も進んでいる。したがって研究の進捗は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに本研究計画のコアとなるデータの取得はほぼ完了しているが、成人や子どもを対象とした対照実験を今後いくつか実施する予定である。そうした対照実験のデータ取得を着実に進めるとともに、学会発表や論文誌上での成果の公開などを見据えて、研究成果を総括する作業も並行して進める。
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Causes of Carryover |
当初は2018年度末に研究打ち合わせを計画していたが、メインとなるデータの取得終了時期が2019年度初めになりそうだったので、そのタイミングで打ち合わせをすることに計画を変更した。そのため、打ち合わせにかかわる旅費相当分が次年度使用額として残ることになった。
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