2017 Fiscal Year Research-status Report
Evolutionary origins of music: A comparative cognitive study of apes
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17K18699
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 裕子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (60621670)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | チンパンジー / 音楽性 / 情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは、進化の過程で一度に多くの他者とのコミュニケーションを可能にするために、触覚から、発声や身振りなどの視聴覚コミュニケーションを発達させたという仮説が挙げられている。特にダンスや合唱に代表される音楽は、音を利用して他者に特定の感情を誘発 することにより、親和性や共感を高めると言われており、その進化的な起源が注目されている。本研究では、こうした音によって他者の感情に働きかけ操作する技術の進化的起源を明らかにするため、ヒトと類人猿を対象に、特定の感情を誘発させる聴覚コミュニケーションやそうした音刺激への感受性を比較することにより、音楽性の起源を明らかにすることを目的とする。本年度は、飼育下のチンパンジーを対象に、様々な文脈で発せられる音声や音を用いたコミュニケーションを記録すると共に、特定の感情や情動状態を誘発すると予測される音刺激を用いてプレイバック実験を行い、行動や感情状態に実際にどのように影響するのかについて検討した。また、音刺激提示前後において唾液を採取し、ストレス度の測定も進めている。ストレス度の測定に関しては、現在分析中であるが、行動による反応につては、同じ発声でもコミュニケーション時に用いられるパントフート等の発声を提示した際には同様の発生や身体運動が誘発されるのに対して、Scream 等のネガティブな音声ではそうした反応はみられなかった。今後さらに刺激音を操作することにより、音声のどの要因がそうした反応を誘発するのかについて調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飼育下で観察される自然なコミュニケーションから、使用される音や動きの時系列的な特徴を分析する予定であったが、各カテゴリについて一定数以上の記録を必要とするため、記録と平行して2年目に予定されていた課題を先行して行った。1年目に予定されていた分析は、来年度には十分な記録が集まっていると予測されるため、問題なく行える見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、記録された音声コミュニケーションを用いて使用される音や動きの時系列的な特徴を分析する。また、プレイバック実験前後に採取した唾液サンプルを分析することにより、各音刺激がどの程度ストレス状態に影響を与えるのかについても明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究成果を論文にまとめるにあたって、英文校閲および掲載料として計上していたが、論文完成が次年度以降に伸びたため、次年度に同様の用途で用いる。
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