2018 Fiscal Year Research-status Report
男子性犯罪受刑者に対する神経生物学的要因を考慮した再犯リスク評価尺度の作成
Project/Area Number |
17K18703
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
遊間 義一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70406536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金澤 雄一郎 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50233854)
野田 哲朗 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (00769979)
河原 哲雄 埼玉工業大学, 人間社会学部, 教授 (30251424)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 神経生理学的検査 / 再犯抑止 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に開発した神経生理学検査,すなわちPC用英語(PEBL)版アイオワギャンブル課題(Iowa Gambling Task)(以下英語版IGTとする)を日本語化したPC用日本語版アイオワギャンブル課題(以下日本語版IGTとする)を用いた調査研究を実施した。 第一は,英語版IGTと日本語版IGTの同等性研究である。本研究は,大学生をランダムに日本語版IGT実施群と英語版IGT実施群とに割り振り,両者の得点等を比較したものである。本研究は,日本犯罪心理学会第56回大会において発表した。 第二は,IGTを性犯罪受刑者に実施し,性犯罪以外で刑務所に入所した受刑者との違いを検討したものである。その結果,いくつかの指標で両群に有意な差があることを見いだした。本研究は,米国・アトランタで開催された第74回アメリカ犯罪学会において発表した。 第三は,触法知的障害者の施設におけるAnger Control Training(以下ACTとする)の施設内逸脱行動に対する抑止効果が,日本語版IGTによる類型によって異なっているか否かの検証を行ったものである。本研究では,日本語版IGTによる学習効果が認められる群と認められない群では,前者はACTの逸脱予防効果が認められるのに対して,後者では予防効果が認められないことが分かった。本研究の結果は,2019年度に発表予定である。 上記以外に,神経発達障害(DSM-5)の中の知的障害者の再犯リスクが,知的障害を有しない者と同じなのか,異なっているのかを検討するために,触法知的障害者の施設を出所した者の追跡調査データを用いて,再犯リスクアセスメントを実施した。その結果,従来のリスクアセスメントにはない要因が知的障害者の再犯に影響を与えている可能性が示唆された。本研究は,日本犯罪心理学会第56回大会及び第74回アメリカ犯罪学会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度までに神経生理学的特徴を把握するための検査の開発が終了し,実際の犯罪者等からのデータ収集が始まっている。中間結果ではあるが,再犯に関する動的リスクを評価するツールとして神経生理学的検査の有用性が確認されており,本年度はこれを基礎にさらにどのように処遇効果に関連するかについて検討を加えていく予定である。以上より,おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,日本語版IGTを少年鑑別所入所少年,刑務所に在所している受刑者,触法知的障害者などの犯罪・非行歴のある集団に実施し,追跡調査を行うことで,再犯リスク,特に動的リスクの評価にどのような貢献ができるのかを検討する。近い将来に,少年法の対象年齢が18歳まで引き下げられることを考えると,現在18,19歳の非行少年を対象として調査を実施することは重要である。また,神経生理学的特徴は,神経発達障害を有する者に最も強く現れると予想されるので,触法知的障害者を調査対象に含めることの意義も大きい。
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Causes of Carryover |
主に次の二つの理由により次年度使用額が生じた。第一の理由は,調査データの入手が遅れたために,これを分析するために購入する予定であったPCの購入を次年度に変更したためである。第二の理由は,日本に招聘する予定であったトロント大学のナスバウム教授と,平成30年6月にモントリオールで開催された国際応用心理学会で会い,研究に関して示唆を受けることができたこと,さらに,平成31年2月には,別の予算でトロントに出張した研究室所属の学生を通じて,再度ナスバウム教授から研究に関する助言を得ることができたことにより,同教授を日本に招聘する必要がなくなったためである。
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Research Products
(3 results)