2017 Fiscal Year Research-status Report
先天性視覚障害児の歩行指導のための空間認知能力評価システム開発
Project/Area Number |
17K18704
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
丹所 忍 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 講師 (70780865)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 先天性視覚障害児 / 歩行指導 / 空間認知 / 空間イメージ操作 / 評価システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先天性視覚障害児の歩行指導において必要となる、空間認知と空間イメージ操作能力を評価するためのシステムを開発することを目的とする。まず、先天性視覚障害児の空間認知とそのイメージ操作能力の特徴を把握し、次に、得られた基礎的知見からシステムを構成する。また、構成されたシステムに基づき歩行指導の実践を行い、最終的に評価システムの完成を目指す。なお、本研究は研究実施者がこれまで取り組んできた研究を継続・発展させて行うものである。2017年度は、対象者を追加して基礎的知見を得るための実験と指導実践を中心に実施し、以下のような成果を得た。 今年度、先天性視覚障害児3名(幼稚部幼児A、小学部児童B、中学部生徒C)を対象として、空間認知と空間イメージ操作に関するアセスメントを実施し、各担当教員から日頃の歩行の様子等を把握するための面接調査を行った。また、中学部生徒Cに対して、未知の教室内の空間認知と移動を促進することを目的とした指導実践を行った。 事例的に得られた結果ではあるが、これまでの実験結果をふまえると、年齢に対して空間イメージ操作課題の成績が低い場合に移動行動等に何らかの困難性がみられることが推察された。具体的には、小学校高学年以上の年齢で心的回転課題の成績が低い場合、普段よく知った教室内や校舎内の移動に特段の困難は見られないが、未知の教室の空間認知の様子を調査すると、物の位置はほぼ正確に把握できるが物の向きの理解が不正確である傾向がみられた。また、こうした場合、向かい合う他者から見たときの左右が判断できないなど他者の左右認知に困難性があることも考えられた。 今後、さらに対象者数を追加して実験と指導実践を行い実証することが必要であるが、これまでの研究結果を考慮すると、本研究で行う実験課題等が先天性視覚障害児の歩行指導のためのアセスメントツールとなり得る可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度(2017年)の予定は、空間認知と空間イメージ操作能力に関する実験を行って基礎的知見を得ることであった。当初の計画と比べて、実験の実施が遅れたために対象者数が限られ、十分なデータを得ることができなかった。一方で、次年度(2018年)実施予定であった指導実践を今年度に行えたため、全体として大きな遅れとしては捉えていない。また、得られたデータの一部を国内学会で発表したり、関連分野の実践家・研究者との協議を行ったりして、研究の方向性について検討できたことも今年度の成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、低発生頻障害である先天性視覚障害児を対象としている。そのため、単一視覚障害児の人数がそもそも少ないという制約がある。現在、新たな研究協力者が得られているが、さらに対象者を追加するようにしたい。今後は、引き続き視覚特別支援学校に対して研究協力を行うとともに、実験と実践を並行して実施していく予定である。また、研究成果を国内学会で発表することと、投稿論文を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
当初の支出予定に対し、旅費の支出が多くなることがわかったため、主に物品費と人件費で調節することとした。人件費の未使用については、実験補助者を依頼せず研究実施者のみで行うように努力したためである。次年度使用額については、今年度の購入を見送った実験等の記録・撮影用機材の購入に充てる計画である。
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Research Products
(1 results)