2020 Fiscal Year Research-status Report
乳児期前半の浅い眠りが脳を育てる:よく眠る赤ちゃんは必ずしも理想的ではないのか?
Project/Area Number |
17K18710
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
中川 敦子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90188889)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 睡眠 / 乳幼児期 / アクチグラフ / 気質 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳幼児期の睡眠の重要性が言われているが、これまでの研究では,乳児期後半以降における検討が多く,乳児期前半の睡眠と発達予後とを検討したものは少ない。そこで本研究では,月齢3か月から24か月にかけて縦断研究を行った。 研究協力児は保護者より研究参加の同意を得た一般乳児35名で、月齢3,4,6,12か月, 24か月の最初の5日間,入浴時にとりはずす以外は,片方の足首にアクチグラフ(米国A.M.I.)を装着して過ごした養育者には睡眠日誌と感覚運動機能と気質に関する調査用紙への回答を求めた。なお、24か月は装着を拒否する児が増えたため、ここでは12か月までの結果を報告する。 睡眠の個人指標は,夜間期(20-8時)および昼間期(8-20時)に分けて算出した。月齢12か月のハイハイ質問項目への回答に基づいて、ハイハイ定型群11名と非定型群20名に分けて検討した。月齢(4)×群(2)の分散分析の結果、夜間の平均睡眠時間では月齢の主効果,群との交互作用が認められ、月齢4か月では非定型群の,月齢12か月では定型群の方が夜間の平均睡眠時間が長かった。夜間の平均活動量については,月齢の主効果,群との交互作用が認められ月齢12か月では定型群の方が夜間の活動量が少なかった。 生後12か月頃になると従来の報告のように,定型群の方が夜間の睡眠が長く,活動量が少ないという結果になるが,生後4か月といった乳児期早期においては,定型群の方が就寝時刻が遅く,夜間睡眠も短いという結果になった。非定型のハイハイは協調運動機能の稚拙さ,筋力的な弱さ,運動量の少なさによるものであると考えられ,将来的に運動発達遅滞や発達性協調運動障害の可能性がある群である。本結果は,乳児期早期に夜間の睡眠時間が長いことが必ずしも良好な予後を予測するわけではないことを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究協力者の協力辞退や、測定装置の故障のため、追加の研究協力者を募り縦断的に研究を行ったので、データの収集がやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の縦断データに関しては学術論文としてまとめるとともに、市民公開講座や子育て支援事業を通して、乳幼児期の睡眠の大切さについて社会に発信し注意喚起する。今回は”よく寝る子がいい子”だという思い込みに一石を投じたいと考えているが、今後も、いわゆる定型発達の多様性について実証データをつみ重ねてきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染の影響により、当初お願いしていたアクチグラフデータ処理の担当者の出勤日数が減ってしまい、繰り越す形となった。今後の遅れた作業に従事してもらう。
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