2018 Fiscal Year Research-status Report
マウス発達障害モデルを用いた生物学的マーカーの探索
Project/Area Number |
17K18719
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山田 郁子 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発技師 (60568723)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 発達障害 / 動物モデル / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マウスの行動表現型を多面的に評価する行動解析テストバッテリーを用いてヒト発達障害患者の病態に即した動物モデルの開発を行うとともに、発達障害モデルに特有の生理学的・生化学的マーカーの探索を試みることを目的としている。平成30年度は、平成29年度に引き続き多面的病態評価システムを用いた発達障害モデルマウスの開発を行うとともに、発達障害モデル候補マウスの血液生化学検査を実施した。 平成29年度に多角的な行動テストバッテリーを実施した系統のうち、Crawley’s social interaction test (CSI)で社会性の低下がみられた系統のうち、Shank2 KO変異体とNlgn3 KO変異体について、血算検査(16週齢時)、血液生化学検査(18週齢時)を実施し、解析を行った。 解析の結果、Shank2 KO変異体のオスではヘマトクリット、ヘモグロビン、好中球、赤血球数、トリグリセライドの値がワイルドタイプと比較して有意に低く、移動活動量との間に負の相関がみられた。しかし、雌では移動距離と相関を示したパラメータはみられなかった。Nlgn3 KO変異体ではメスのホモでアルカリフォスフォターゼ、アミラーゼの値が低く、移動活動量と負の相関を示した。また、グルコースの値がメスのホモではワイルドと比較して高く、移動活動量と正の相関を示した。しかし、雄では移動距離との相関を示したパラメータはみられなかった。 これらの結果から、Shank2 変異体、Nlgn3 変異体のいずれにおいても活動量と相関を示す生化学的指標が見いだされたが、系統間で共通した傾向を示すような指標は見出すことができなかった。今後、他の発達障害モデル候補系統のマウスについても同様の解析を行い、複数の系統に共通するような行動的、生化学的データを見出して生物学的マーカーとしての検討を行っていく必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は多面的病態評価システムを用いた発達障害モデルマウスの開発を行うことを目的としていた。発達障害モデルマウスの開発に関しては、遺伝変異マウスに行動解析テストバッテリーを用いた網羅的解析を実施したところ、多動、社会性の低下、学習障害など、人の発達障害患者と共通した表現型を示すマウス系統が見出された。これらの系統は有力な発達障害モデル候補と考えられる。モデルマウスの開発に関してはおおむね順調に研究は進展していると考えられる。 平成30年度は、本研究によって開発された新たな発達障害モデルマウス、および既存の精神疾患モデルマウスに対し、テレメトリーシステムを用いた生理指標の継時的スクリーニングを行い、行動的、生理学的表現型の解析と新たな生物学的マーカーの探索を行うことを目的としていた。平成29年度中にテレメトリーシステム用機器を購入して予備的実験を行う計画であったが、購入を予定していたモデルの開発がメーカー側の都合で中断しており当初計画の通りに購入することが困難になった。そのため購入機器を新たに選定しなおして平成30年度に送信機を購入した。また、テレメトリーシステムの購入が遅れていたため、平成31年度に実施予定であった血液生化学検査を一部前倒しで実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、平成29、30年度に引き続き行動テストバッテリーを用いた発達障害モデル動物の開発を行う。また、本研究によって開発された新たな発達障害モデルマウス、および既存の精神疾患モデルマウスに対し、テレメトリーシステムを用いた生理指標の継時的スクリーニングを行い、行動的、生理学的表現型の解析と新たな生物学的マーカーの探索を行う予定である。 発達障害患者のうち、ASD患者では感覚神経や自律神経系の異常、ADHD患者では発達性協調運動障害といった運動神経の異常や睡眠障害など多様な随伴症状がみられる。また、ASD患者において事象関連電位p300に異常がみられたとの報告もある。そこで、発達障害の特徴と共通する行動表現型が見られたマウス系統およびポジティブコントロールとして既存の精神疾患モデルマウスに対し、テレメトリーシステムを用いて深部体温などの生理学的マーカーの継時的解析を行う。小型テレメトリーシステムを用いることで行動テスト実施中や実施直後などの生理学的指標を測定することが可能になるため、ストレス負荷下での生理学的指標の継時的変化など、より詳細なデータを収集することができ可能になる。これにより発達障害の新たな生物学的マーカーの発見が期待される
|
Causes of Carryover |
平成29年度中にテレメトリーシステム用機器を購入して予備的実験を行う計画であったが、購入予定のメーカーが機器開発を中断した為、当初計画の通りに購入することが困難になった。そのため平成30年度に購入機器を新たに選定しなおし、最低限の実験計画を遂行可能なシステムを購入した。次年度に繰り越しを行った予算については、送信機の追加購入と生化学検査に必要な試薬購入などにあてる予定である。
|
Research Products
(4 results)
-
[Journal Article] Autophosphorylation of F-actin binding domain of CaMKIIβ is required for fear learning2019
Author(s)
Karam Kim, Akio Suzuki, Hiroto Kojima, Meiko Kawamura, Ken Miya, Manabu Abe, Ikuko Yamada, Tamio Furuse, Shigenaru Wakana, Kenji Sakimura, Yasunori Hayashi
-
Journal Title
Neurobiology of Learning and Memory
Volume: 157
Pages: 86-95
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-