2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K18733
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木村 正人 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70263358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 良巳 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (10315830)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 皺パターン / 亀裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
連続媒質 ― 例えば弾性体や界面エネルギーを持つ相界面etc. ―に皺に代表されるような周期性をもつ微細構造が形成された場合の長波長挙動,とくに周期と振幅が適当なスケーリングを保ちながらゼロに行く極限で得られる有効理論(周期構造を平均化することで得られる連続体理論)構築の可能性に関して薄板や濡れの問題を例として考察した。 実験面では,皺形成を伴う弾性シートの破壊実験の定量化に取り組んだ。実験設定は,平行に固定した2枚のガラス板の間で,予め切り目を入れた紙を引っ張って引き裂くというものである。ガラス板間距離Hを実験パラメータとして変化させつつ,紙の変形に伴って生じる皺パターンの詳細な観察を行った。また,形態学的な情報の取得に加え,紙を引き裂く時の荷重と紙に与えた変位の関係を定量的に計測した。こうした実験の結果,Hと初期き裂伸展開始前に観測される最大皺本数Nの間にN ~ H ^α (αが約-0.55程度)というスケーリング関係式が示唆された。また,紙の引き裂き(き裂進展)時に観測される最大荷重Fmaxは,Hの減少とともに著しく増大することが見いだされた。例えば,A4用紙程度サイズのコピー用紙を試料としたとき,拘束が無い時(H=∞に相当)に観測される紙自体のintrinsicな引き裂き強度が1N程度であるの対し,H=1mmでは,Fmax=14N程度にも達した。またFmaxとHの間にも,Nの場合と近い指数のスケーリング則(Fmax ~ H ^β ;β が約-0.62程度)がえられた。さらに周期的な足場構造が存在する場での変分問題の例として,螺旋構造の濡れ問題についても注目し実験を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は2名の研究組織で、非常に多くの議論を重ねることができ、いくつかの有望なアイデアを得ている。特にすでに横浜国立大学における物理実験においては、いくつかの実験を開始し、その結果の解釈や数理モデル化などについて議論を重ねている。数値実験の方面でも、具体的に実験を始める準備が整っており、金沢大学の大学院生に手伝ってもらい予定通り平成30年度にいろいろなアイデアに取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は、新規なアイデアに基づくものであるため、まずは有望な数理モデルの数値実験と物理実験系を並行して試し、そこで得られた知見を交換しつつ、より興味深い数理モデルおよび実験系へと昇華させていく必要がある。平成30年度は、初年度に得られた知見を活かし、最も簡単な数理モデルの例として、Cahn-Hilliard型の皺エネルギーを用いるアイデアを当面の数値実験の対象とし、また物理実験の方は、弾性シートの皺形成をメインにしつつも、螺旋構造の濡れ問題やリボン状の物体におけるループ形成の実験など、よく似た数理構造を背景に持つと考えられるいくつかの物理実験系もトライする。木村が担当する数値実験と田中が担当する物理実験の結果は密に交換し、より深い解析につながるヒントを見逃さないように努める。
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Causes of Carryover |
研究計画の初年度に当たり、実験担当の分担者の田中が所属する横浜国立大学において、実験に不可欠なワイドレンジズームレンズを設置し、また実験に必要な消耗品を購入したが、最終的に16,528円の差額が未使用となったため、それを有効に活用するため次年度に使用することとした。
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Research Products
(1 results)