2021 Fiscal Year Research-status Report
Infinite-dimensional Hilbert representations of quivers
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17K18739
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
綿谷 安男 九州大学, 数理学研究院, 名誉教授 (00175077)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | quiver / ヒルベルト表現 / 正写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
箙(えびら=quiver)とは、有向グラフのことであるが、環論と表現論における研究ではこの別名がよく使われている。箙(quiver)の有限次元表現とは、有向グラフの頂点に有限次元ベクトル空間を対応させ、有向グラフの辺(矢印)には線型写像を対応させたものである。「構造の対称性」を表す数学的概念が群であるなら、「対象の関係性」を表す数学的概念が箙(quiver)=有向グラフである。どちらも簡素ではあるが、基礎的で普遍的に現れる重要なものである。対称性を表す群を調べるにはそれを線型化して、(ユニタリ)行列として表現するのが有力な研究方法である。それと同様に、対象の関係性を表す箙(quiver)=有向グラフを調べるにはそれを線型化して、頂点と矢印を、ベクトル空間と線型写像として、表現するのが有力な研究方法である。群の表現では、無限次元のヒルベルト空間上の作用素として群を表現して研究することが当然のように幅広くなされてきた。しかしながら、箙(quiver)の表現では、そのようなヒルベルト空間を使った無限次元化は、私たちの先駆的な研究を除いては、全くなされていなかった。今回は、有向グラフの頂点には無限次元ヒルベルト空間を対応させ、有向グラフの辺(矢印)には作用素で箙を対応させるという、箙(quiver)の無限次元ヒルベルト表現を考察し、その直既約表現の構成とそれらの間の既約射を研究した。 さらに、ヒルベルト表現全体のつくる圏やその導来圏の構造も探求した。ここで直既約表現とはこれ以上非自明な直和に分解できない表現で、表現全体の building block である。しかしながら、これらに対する射の解析が非常に難しい事が判明した。その過程で作用素環の間の非線形の正写像を根底から考え直して、圏の射の概念を拡張することで今回の研究をさらに発展させることができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒルベルト表現全体のつくる圏やその導来圏の構造を探求するのが目標である。特に直既約表現はこれ以上非自明な直和に分解できない表現で、表現全体の building block である。しかしながら、これらに対する射の解析が非常に難しい事が判明した。それをどうにか打開しようと非線形正写像の研究に着手した。新たな攻略の指針を獲得できたことは研究上望ましいことである。それで今年度は作用素環の間の非線形の正写像の例をいろいろ調べている。例えば積だけを保存する写像もそうだし、operator monotone functionによるfunctional calculusも非線形の正写像である。また非加法的な測度による積分であるショケ積分や菅野積分も非線形の正写像である。これらの多くの具体例を特徴付けることを試みている途上である。
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Strategy for Future Research Activity |
非線形正写像を射として使うことで圏の構造がより柔軟に取り扱えるようになったので、この新たな攻略の指針に基づいて、ヒルベルト表現全体のつくる圏やその導来圏の構造の研究を進めたい。しかし、地道に、まずは非線形の正写像の多くの具体例を元にそれを行列環や一般の作環上環上にその類似を考えて、その特徴付けをえることを目指したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で予定していた外国や国内での研究集会への参加がすべて取りやめになったため。研究集会への参加や共同研究の旅費に使う予定である。また学生や院生への援助も行う予定である。
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