2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K18741
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
厚地 淳 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00221044)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ネヴァンリンナ理論 / 正則写像 / 有理形関数 / 拡散過程 / 確率解析 / 劣調和関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度も前年度に引き続き 1.一般ネヴァンリンナ理論の構築 2.新たな特性量の解析と一般ネヴァンリンナ理論の適用 の2課題に対して研究を行った。1に関しては、前年度において曲率条件を外すための方策として、写像の定義域の被覆空間がユークリッド空間の領域に正則同型であるようなものを考えることを提案した。平成30年度の研究では、本研究の中心的アイディアである放物型スキームと、従来の楕円型スキームを統合することにより、次の成果が得られた。まず、値域が1次元の場合は、代表者の以前に行った曲率条件の下でのケーラー多様体の場合の結果と同様な拡張が得られた。さらに、値域が多次元の場合、特に、多次元複素射影空間の場合は、対数微分の補題を拡張することにより、H.Cartanの理論とVitterの定理を拡張することができる。これにより、このような一般的状況下での第二主定理の確立について目途がついた。今のところ、誤差項に現れる定数が期待されるものより大きいので、この改善が今後の課題となる。 2については、前年度の一般化された個数関数の研究を深化させることにより、破綻関数の解析学への応用研究を行った。前年度の研究ではディリクレ空間の理論を援用し、かなり一般の対称拡散過程から生成されるディリクレ過程に関する破綻関数を研究したが、より広範な応用を含むように理論を整備した。応用としては、一様楕円性を満たす局所的対称作用素に関する劣調和関数のL1リュービル型定理、山辺型微分不等式を満たす関数の有界性評価(前年度の結果の改善)、正則写像のリュービル型定理(Li-Yauの定理の拡張)、歪曲度の増大度条件による調和写像の非存在定理(Goldberg-Ishiharaの定理の拡張)などがあげられる。さらに、1の研究と合わせることにより、擬正則写像のネヴァンリンナ理論についても研究の端緒が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、研究課題1.一般ネヴァンリンナ理論の構築、2.新たな特性量の解析と一般ネヴァンリンナ理論の適用の研究は、おおむね順調に進展し、次年度に一定の完成を見ることが期待できる。また、次年度にはさらに進んだ萌芽的課題について今後の筋道をつけ、基盤研究への展開に進むことができるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題『一般ネヴァンリンナ理論の構築』に関してであるが、定義域をその被覆空間がユークリッド空間の領域であるような複素多様体とし、値域を複素射影空間とする正則写像に対するネヴァンリンナの定理に関して、平成30年度までに基礎的な研究を行ってきた。これらの研究成果を統合し、第2主定理の形として確立する。現在得られている手法に加えて、藤本、Min RuらによるAhlfors-Cartan理論の拡張を我々の手法に取り入れ、現れる定数に関する精査を行うことにより本研究課題の一つの最終形を提示する。『新たな特性量の解析と一般ネヴァンリンナ理論の適用』に関しては前年度までの研究で擬正則写像のネヴァンリンナ理論の可能性が得られているが、これについて本格的に考察する。さらにランダム解析関数の値分布、葉層構造の関数論的性質への応用についての研究を発展させることにより、『有理形関数のジェネリックな性質の抽出』の研究を進展させる。
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Causes of Carryover |
平成30年度に予定していた一部の出張が、先方と当方のスケジュールの調整等で当該年度に行うことが困難となり、次年度以降に行うことにしたため、残額が生じた。 平成31年度については、これらの未達成部分を遂行するとともに、最終年度であることから、イギリス、中国等で開催される研究集会、および国内の多くの学会に出席し、研究成果の発表を行う予定である。このために旅費を使用する。また、研究成果の最終的な取りまとめのための文献調査、情報収集等を依頼することも予定しており、そのために謝金を使用する。
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Research Products
(3 results)