2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K18741
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
厚地 淳 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00221044)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | ネヴァンリンナ理論 / 正則写像 / 有理形関数 / 拡散過程 / 劣調和関数 / ディリクレ形式 / リューヴィル型定理 / リーマン・ロッホの定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.一般ネヴァンリンナ理論の構築: 2019年度までの研究に引き続き、写像の定義域の被覆空間がユークリッド空間の領域に正則同型である場合の研究を発展させた。特に、定義域が複素ユークリッド空間の正則なグリーン領域の場合を考察した。写像の値域が1次元の場合の研究を発展させ、値域を一般次元の複素射影空間とし、超平面を因子とするネヴァンリンナの第2主定理について研究した。2019年度までの研究では、定義域の領域が Cousin II領域である場合に第2主定理を得たが、2020年度はより一般の領域でも同様な結果が成立するかどうかを考察し、定義域が1次元の場合は、より一般の正則なグリーン領域で同様な結果が成立することを見出した。 2.新たな特性量の解析と一般ネヴァンリンナ理論の適用:前年度に引き続き、局所コンパクト距離空間上の局所的正則ディリクレ形式の理論の枠組みで理論を整備・拡張した。前年度までの研究を Default functions and Liouville type theorems based on symmetric diffusions として論文にまとめ投稿中であったが、いくつかの修正の後、Jour. Math.Soc.Japan に掲載決定となった。 3.ジェネリックな有理形関数の一般的性質の抽出については、離散構造と粗視化を軸に新しい方向の研究を行った。トロピカル幾何学の視点を導入し、無限グラフ上のリーマンーロッホの定理を与えた。これは、研究協力者の金子宏教授(東京理科大)との共同研究による。成果は、A Riemann-Roch theorem on a weighted infinite graph として論文にまとめたが、さらに加筆・修正を行い、現在は査読中である。この方向の進んだ研究として、超距離空間に対応する非局所有限グラフの場合を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度までの研究の進捗状況は良好であり、目標とした研究について一定の成果を得ていたので、2019年度で本研究は完結するはずであった。ところが、2019年9月に研究代表者が不測の病気に罹患したため、同年後半に予定していた研究活動を中止せざるを得なかった。さらに2020年にはコロナウィルスの感染拡大により、2020年以降現在まで参加を予定していた研究集会や、出張を伴う研究討論がすべて中止となった。そのため研究を完遂することができず、2021年度に研究計画を延長することとなった。このような状況を鑑み、研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
3つの研究テーマについていずれのテーマも一定の成果を得ており、これらをまとめ、発表し、次の基盤研究につながるように整備する段階にある。個々については以下の通りである。 研究テーマ1.一般ネヴァンリンナ理論の構築については、研究実績の概要で述べた一般領域のネヴァンリンナ理論の論文を完成させる。 研究テーマ2.新たな特性量の解析と一般ネヴァンリンナ理論の適用については、一定の完成を見ているが、研究の中で劣調和関数の拡張定理やピカールの大定理との関連など新たな発展も見えてきているので、基盤研究につながるように整備する。 研究テーマ3.ジェネリックな有理形関数の一般的性質の抽出. 研究実績の概要で述べた無限グラフ上のリーマン・ロッホの定理のように、一定の成果を得ることができたので、この手法を用いてトロピカルネヴァンリンナ理論の定式化などについて基盤研究につながるように一定の方向性を提示する。 以上の研究成果を2020年度に予定していた研究成果発表および国内の研究者との意見交換のために、2021年度後半に研究集会とセミナーで発表し、研究全体の総括と本研究課題の完遂を図る。
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Causes of Carryover |
2020年はコロナウィルスの感染拡大により、2020年以降現在まで参加を予定していた研究集会や、出張を伴う研究討論がすべて中止となった。そのため研究を完遂することができず、未使用額が生じた。2021年度は、中止となった研究者らとの研究討論、また、研究集会やセミナーへの参加を予定しており、そのための旅費として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)