2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18742
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井口 達雄 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (20294879)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 水の波 / 内部波 / 孤立波 / 極限波 / Hamilton構造 / 変分構造 / 磯部‐柿沼モデル / 柿沼モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象である水の波の基礎方程式系は変分構造をもつことが知られており,水面の振幅および速度ポテンシャルを用いてLagrangianを書き下すことができる.その速度ポテンシャルを鉛直方向の空間変数に関する多項式で近似することにより得られる近似Lagrangianに対するEuler-Lagrange方程式(磯部‐柿沼モデル)を数学的に解析することが本研究の主要な目的である. 2020年度は,内部波に対する柿沼モデルの研究をさらに推し進めると同時に,磯部‐柿沼モデルに対する大振幅孤立波解の構造を大域的分岐理論を用いて解析したいと考えていた.しかし,新型コロナウィルス感染症の影響により,著しく研究活動が制限された.予定していた海外研究者の国内招聘は中止とせざるを得ず,国内および海外研究集会は中止となるかオンラインでの開催となり,対面での研究討論を行うことは出来なかった.また,本務である学内業務の激増により研究に費やす時間はほとんど失われることになった.そのため,2020年度は顕著な研究実績を上げることはできなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における主要な研究目的は水の波に対する磯部‐柿沼モデルの数学解析である.2019年度までの研究により,その初期値問題の時間局所的な適切性が示されたのみならず,これまでに知られているモデルを遥かに凌ぐほどの高次浅水波近似になっていることも数学的に証明された.さらには,小振幅孤立波解の存在が示され,まだ数値的に確認されたのみであるが,大振幅孤立波に関しては極限波が存在することを見い出している.水底の凹凸の影響に関しても,磯部‐柿沼モデルを導出する際の基底関数の選び方が重要になることを確認するに至っており,Hamilton構造についても解明された.2020年度はコロナ禍のため,これらの成果をさらに発展させるには至らなかったが,以上のことを鑑みて,研究は順調に進展してると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に研究する予定であった内部波に対する柿沼モデルの研究をさらに推し進める.表面波に対する磯部‐柿沼モデルのこれまでの研究により,柿沼モデルも強非線形高次浅水波モデルになっていることが期待されるので,その確認を行う.しかしながら,技術的には複雑な計算を遂行しなければならないと予想される. 次いで,余力があれば,磯部‐柿沼モデルに対する大振幅孤立波解の構造を大域的分岐理論を用いて解析したい.特に,極限波の存在を理論的に保証したい.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により,招聘を予定していた海外研究者の来日が中止され,開催が予定された国内および国際研究集会は中止あるいはオンラインでの開催となった.さらには,定期的に開催していた慶應義塾大学理工学部における非線形解析セミナーを対面で開催することは困難となり,セミナーの趣旨を鑑みて2020年度は開催しなかった.主要な研究経費はそれらの旅費として計上していたが,それを使用する機会を失うのみならず,研究活動が著しく制限されたため,補助事業期間を延長するに至った. 2021年度の研究計画は,COVID-19による影響が長引かない限り,主として国内および国際研究集会に積極的に参加し研究討論を行う.一方で,COVID-19の影響が長引き,研究活動の制限が引き続く可能性もある.その場合,関連書籍を積極的に購入するなどして研究資料や情報の収集に努める.
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Research Products
(6 results)