2017 Fiscal Year Research-status Report
Topological magnons in skyrmion-lattice phases
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17K18744
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 卓 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70354214)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 中性子非弾性散乱 / 磁気スカーミオン / マグノン / 物質探索 / 小角散乱 / トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、磁性体中に磁気スカーミオンと呼ばれるトポロジカルスピンテクスチャーが発見され精力的な研究が進められている。磁気スカーミオン構造はスピンが全立体角を覆い尽くす構造であり、自明な強磁性構造とはトポロジカルに異なる。現実の磁性体ではスカーミオンは三角格子を組むが、一方で構成する磁気モーメントの集団運動としてのマグノンも同時に存在する。スカーミオン格子構造中のマグノン分散はスカーミオン格子周期に対応するバンド構造を形成するが、各バンドは異なるトポロジカル数を有し、非自明なトポロジカルマグノン相を形成する。本研究の目的は中性子非弾性散乱法を小角低エネルギー領域に拡張することでトポロジカルマグノンバンドの存在を直接確認し、その分散関係を解明することにある。研究計画は A)小角低エネルギー領域の中性子非弾性散乱法の開発、B)小さなスカーミオン格子間隔を持つ物質の試料育成の2本柱で構成されている。研究計画初年度では、B) に関してはスカーミオン格子間隔の広い物質系を (Mn,Fe)Si, Mn(Si, Ge), (Mn, Fe)Ge 等の物質系から探索した。この結果、MnSi1-xGex が最も可能性の高い系であることが明らかとなった。なお、この物質探索研究に必須な帯磁率計のプリアンプ不調が生じたためこれを更新した。一方、A) に関しては、上記物質探索研究で得られたMnSi1-xGex 粉末試料(x ~ 0.1)を用いた予備的中性子非弾性散乱を予定通り米国ORNL/CTAX分光器にて実施した。この結果既存の試料(磁場)環境で十分に実験が可能であること、一方で最小中性子エネルギーに対する制約から必要なエネルギー分解能を達成することが難しいことが明らかとなった。B)の成果に関しては現在論文発表を計画している一方で、A)の成果に関しては次年度の計画策定に役立つ有意義な結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の中性子散乱実験としては、MnSi_(1-x)Ge_xの予備実験をCTAX分光器で実施することができた。この実験では磁場温度相図中のスカーミオン相領域の確定、およびスカーミオン格子間隔のx依存性等を詳細に調べた。これらは物質探索研究にフィードバックすることができる重要な情報である。同時に次年度の本実験に向けた非弾性散乱開発実験を行い、粉末試料での磁場中磁気励起測定の可能性の検証、および最高エネルギー分解能の確認等、本研究の目標達成に必要な項目を確認した。その結果、磁場中実験は十分に可能であることが判明した一方で、CTAX分光器の現在の最低エネルギー(約3meV)では必要なエネルギー分解能を得ることが難しいことが判明した。これは事前に行なった数値的な見積もりとは矛盾する結果であり現在その原因を調査している。一方、物質探索に関しては(Mn,Fe)Si, (Mn,Fe)Ge, Mn(Si,Ge)の系に関して物質探索および基礎物性評価を行なった。Mn_(1-x)Fe_xSiに関してはx ~ 0.1 程度までの単結晶試料作成に成功したが、xが増加するにつれて磁気転移温度が急激に減少する。(Mn,Fe)Geに関しても材料科学的検討を行い粉末試料合成に成功したが、試料の質向上が難しく小角非弾性散乱研究には不適と判断した。Mn(Si,Ge)は種々の条件検討によりx~0.1程度までは十分な質・量の粉末試料が得られることがわかった。この結果は単結晶育成への可能性を開くものであり本研究の進展に重要である。さらに本研究に触発され当初予期していたより広い物質群においてマグノン等の磁気励起のトポロジカルな性質に関する研究も行なった。その結果反転対称性を持たないa-Cu2V2O7のマグノン熱輸送や梯子型格子を持つ物質系におけるトポロジカルに非自明なマグノン、トリプロン励起の観測等の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
試料探索に関しては、Mn(Si,Ge)が本研究の目標達成に適当なほぼ唯一の系であると考えているが、念のため(Mn,Fe)Si系の単結晶育成も継続する。Mn(Si,Ge)系に関しては、多結晶試料の安定的な育成条件はおおよそ判明したものの、単結晶育成に関してはまだまだこれからである。そこで、本年度最初に単結晶育成条件を集中的に探索し、この系の単結晶育成の可能性を明らかにする。一度育成条件が判明すれば、我々の(Mn,Fe)Si系等での単結晶育成経験から、中性子用大型単結晶の育成が可能であるものと期待している。一方で、初年度予備実験から粉末試料においても磁場中小角中性子非弾性散乱が可能であることがわかっているので、万が一単結晶試料育成が困難な場合も非弾性散乱実験はできるものと予想している。中性子散乱実験に関しては、本研究の成功に必須な中性子小角非弾性散乱実験におけるエネルギー分解能向上をさらに進める。我々の装置シミュレーションによるとCTAX分光器におけるエネルギー分解能不足の原因はマルチブレードアナライザーによるものと想定されるが、これを改善することは本研究の予算範囲では難しい。一方で、同種の冷中性子分光器は世界に数台存在する。我々はこれらのうちいくつかと共同研究を開始することにより本研究に必要なエネルギー分解能を達成する。幸いなことに磁場環境に関してはそれほど制限が大きくないことが判明したため、必要なアナライザー機構さえあれば実験は可能と考えている。また、本年度は実験データ解析のためのマグノン計算コードも完成させる。すでに、種々の磁気構造に対する計算は可能であるが、スカーミオン格子系は単位胞が大きく最適化の必要がある。中性子散乱に関してはこれらの研究開発により十分に当初の目的を達成できると考えている。
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Causes of Carryover |
本研究の2本の柱の一本である物質探索には帯磁率測定が欠かせない。しかしながら、研究開始後のかなり早い段階で帯磁率計のプリアンプに不調が発見され、研究遂行のためにプリアンプの新規購入が必要となった。そのため研究計画をさらに精査するとともに、既存の超伝導磁石を使用した中性子非弾性散乱予備実験を行うことで、新たなチャンバー・スティック等の制作をせずとも既存の超伝導磁石に付加設備を製作することで実験が遂行できる目処がたった。この付加設備を次年度に製作するため、できる限り経費を削減し次年度に残すこととした。次年度ではこの付加設備の制作とともに中性子散乱本実験への旅費や試料缶等の制作費用、さらに単結晶育成のための原料および物性測定のための寒剤等への研究費使用を計画している。
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[Journal Article] Scaling of Memories and Crossover in Glassy2017
Author(s)
A. M. Samarakoon, M. Takahashi, D. Zhang, J. Yang, N. Katayama, R. Sinclair, H. D. Zhou, S. O. Diallo, G. Ehlers, D. A. Tennant, S. Wakimoto, K. Yamada, G-W.Chern, T. J. Sato, S.-H. Lee
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Journal Title
Magnets Scientific Reports
Volume: 7
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] MnSiで観測される磁気スキルミオン反射の回転とブロードニングの特異な電流密度及び温度依存性2017
Author(s)
奥山大輔, M. Bleuel, Q. Ye, P. Butler, 星野晋太郎, 岩崎惇一, 永長直人, 吉川明子, 田口康二郎, 十倉好紀, 東大樹, 南部雄亮, 佐藤卓
Organizer
日本物理学会2017年度秋季大会
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