2017 Fiscal Year Research-status Report
On the photoelectric effect at the edge of matter
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17K18749
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 行章 東京大学, 物性研究所, 助教 (30442924)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 光電効果 / 表面光物性 / 非線形光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体物質に仕事関数を越える光子エネルギーをもつ光を照射すると、光電効果によって固体表層から光電子が跳びだす。これは光の粒子性を如実に表す現象である。この量子過程におけるエネルギーの保存はよく知られる一方で、運動量保存に関しては未解明の問題が残されている。特に、光と物質の誘電相互作用がまだ十分大きい深紫外域の光を照射した場合、入射光が固体表層において最早長波長の光と見做せなくなる可能性およびこの長波長近似の破綻が光電効果に果たす役割は、1930年代から認識されている未解決問題である。 本研究は、深紫外光を照射した際の光電効果のメカニズムを解明することを目的とする。深紫外域において偏向および入射方向をコントロールすることが容易なレーザー高調波を用い、出てくる光電子の分布を最先端電子分析器で捉えることで、長波長近似の破れを検証し、またこの破綻に伴う新現象の探索を行う。 本研究を遂行するために、まず原子レベルで清浄な結晶表面を作製する必要がある。初年度は、試料表面処理のための真空槽の整備を行い、有機物を真空蒸着したトポロジカル絶縁体やSnTe薄膜の時間分解光電子分光測定を可能にした。また、最先端分析器でとらえられる光電子分布をブロッホ電子の分布に焼き直すためのプログラムを開発し、これをRev. Sci. Instrum. 誌に発表した。さらに、深紫外レーザー高調波を発生させるための小型レーザーシステムの開発をはじめ、中心波長1030nm, 繰り返し周波数100MHz, パルス時間幅>250fs、最大出力~4Wを達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
試料表面処理のための真空槽の整備は予定通り初年度中に完了し、これまで不可能であった試料表面の清浄化が可能となった。また、当初の計画を前倒しして深紫外レーザー光源の開発をはじめ、順調に装置がたちあがりつつある。また、光電子分布を最先端光電子分析器でとらえる考察を進めるうちに、この分布をブロッホ電子の運動量空間にマップするためのプログラムの開発に至り、これを誌上発表した(オープンアクセス)。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
深紫外レーザーの開発をすすめ、入射方向と光の偏向を自在に制御して光電子分布を捉えることができるシステムの構築を予定通り進める。光電子分布の精査から、長波長近似の破綻の検証を行い、表面における光電効果の機構解明を進める。
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Causes of Carryover |
深紫外レーザーシステムの開発をはじめ、この進捗具合で、必要物品を購入する必要がでてきたため。現在、新たにオシロスコープが必要であり、これを次年度使用額に繰り越した。
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