2017 Fiscal Year Research-status Report
重元素結晶表面の擬似液体相におけるRashba型スピン軌道相互作用
Project/Area Number |
17K18757
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大坪 嘉之 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (70735589)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 擬似液体層(QLL) / トポロジカル表面状態 / スピン軌道相互作用 / 表面電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画通り、低融点金属であるビスマス(Bi)の表面擬似液体層(QLL)の作製とその電子状態観測を目指し、試料表面を室温以上の温度に保ってその原子構造および電子状態の観測を行った。 Bi単結晶の表面電子状態は温度上昇に伴って大きな変化を示した。特に表面ブリルアンゾーンのM点近傍において、低温では表面電子状態が結晶内部(バルク)伝導帯の電子状態射影域に接続するのに対し、400 K を越える高温域ではバルク価電子帯バンドに接続するような振る舞いを示した。これは低温で観測されている非自明なトポロジカル半金属の特徴を示す表面状態から通常の(トポロジカルに自明な)半金属への相転移を反映している可能性があり、今後も調査を進める予定である。 一方、この変化にQLLの形成が寄与しているか否かについてはまだ確定できていない。本年度は試料温度450 K程度までの測定を行ったが、その温度まででは表面原子構造の変化に敏感な低速電子回折および角度分解光電子分光による新たな2次元層の形成およびそれに伴う新たな2次元電子状態の発生を示唆するような情報は得られなかった。バルクBiの融点は550 K 程度であるので、QLLの形成がそこまでの比較的狭い温度域に限られている可能性が高まった。この値は典型的な金属の表面融解が発生する温度とバルク融点との差と比較すると小さく、Bi表面が比較的「融けにくい」ことが明らかになった。今後はより精密・定量的な電子回折・光電子分光実験を融点直下までの広い温度域において行い、QLL層の電子状態についての調査を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ビスマス(Bi)結晶の表面が通常金属よりも「融けにくい」ものであったため、本年度に測定した温度範囲まででは表面擬似液体層の形成を確認できなかった。ただし、結晶の融解自体は融点以下で確実に起きる事象であるため、より高温での実験により遅れは取り戻せると考えている。 一方、高温に保ったBi単結晶の表面電子状態においては低温相と質的に異なる可能性のある特徴が観測されており、当初想定とは異なるものの新たな知見も得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の研究の経過では450 K までの温度域でビスマス(Bi)単結晶表面の原子構造および電子状態の変化を調査したが、表面擬似液体層(QLL)特有の電子状態については観測できなかった。本年度はバルクBiの融点(550 K)程度まで結晶温度を上げ、融解直前までの表面原子構造および電子状態の変化を追跡する。 並行して、本年度はBi以外の低融点金属(鉛、ガリウム等)によるQLLの形成およびその電子状態の観測も試みる。特に、スピン軌道相互作用の大きい重元素を含み、かつ等方的なバルク単結晶とは異なる、異方的な特徴を残したQLLの形成を目指す。こちらの方針に際しては、単純な低融点金属の単結晶ではなく、半導体基板表面に低融点金属の薄膜層を形成することでQLLに異方性を導入することを狙う。
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Causes of Carryover |
端数が生じ、年度末に使い切ることは不自然だと考えたために次年度に繰り越すことにした。当初計画で初年度に購入予定であった物品は全て購入しており、資金使用予定に変更はない。 端数分は消耗品の購入費に組み入れ、本年度中に使用する予定。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] InAs(110)表面上の擬一次元的Biにおける異方的Rashba効果2018
Author(s)
中村拓人, 大坪嘉之, 山下雄紀, 出田真一郎, 田中清尚, 矢治光一郎, 原沢あゆみ, 小森文夫, 辛埴, 木村真一, 湯川龍, 堀場弘司, 組頭広志
Organizer
日本物理学会
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