2017 Fiscal Year Research-status Report
Origin of blood rheology: Toward comprehensive understanding of single-, two- and many-body mechanics
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17K18759
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 弘明 大阪大学, 工学研究科, 特任研究員(常勤) (10783186)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 赤血球 / 細胞力学 / 多体相互作用 / ヘモレオロジー / マイクロ流体工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マイクロ流路内で赤血球の多体流れの速度や密度の制御を実験的に実現するマイクロ流体デバイスを開発し、血液レオロジーのメカニズムを探る。この目標に向け、本年度は血球細胞を粒子サイズと変形能から選別するフィルター構造、粒子濃縮のためのバイパス構造を持ったマイクロ流路を設計し、ある程度の範囲で任意の流速や任意の粒子密度で擬二次元面内を流れる赤血球多体系を実現するマイクロ流路を作製した。さらに、このマイクロ流路を用いた実験で得られた赤血球多体流の動画から多数の赤血球の時々刻々の各位置を得る解析プログラムを作成した。 解析結果から、赤血球密度がある程度高くなると流路に沿って流れる主流に直交する方向に赤血球の輸送が生じることがわかったため、これを流体相互作用による流れの乱れとみなしてこの輸送を定量した。このような主流と直行する方向への流れによる輸送は、通常の均一流体の層流では起こらず、多粒子分散系に特徴的な赤血球間に働く流体相互作用に由来するふるまいである。これを低密度から血流の赤血球密度を超える高密度まで解析することで、赤血球の密度に依存した多体流れの乱れを定量的に得ることができた。 また、次年度はこの密度依存性と単一赤血球の粘弾性特性との関連を精査する予定であるが、この準備として本年度はマイクロ流路内精密マニピュレーション(Ito et al., Sci. Rep. (2017))を応用したマイクロ流路内形状ゆらぎ解析を行う実験システムを構築した。これより、流路内を流れる単一粒子赤血球の曲げ弾性係数や粘性係数を得られるようになり、さらに赤血球自身のサイズに匹敵する大変形との相関も得られた(Ito et al., MEMS2018 (2018))。 翌年度の実験計画の遂行に向け、新たな流路の設計や作製も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、初年度に実験システムの構築と解析の着手、最終年度である次年度に包括的な実験データの取得と解析および結果のとりまとめを行い、計二年で完了予定である。現在までに、当初の研究計画に準拠して実験システムと解析プログラムの構築が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに実験システムの構築と実験結果を取扱う主要な解析プログラムの作成を行い、赤血球多体流れについて位置と速度の密度依存性を得た。次年度はこれを発展させ、多体流における個々の赤血球の形状解析など、変形能の効果を取り入れた解析を行う。また、ゆらぎ解析を組み合わせた二体衝突の実験と解析を新たに行う予定である。これらの結果をとりまとめ、赤血球多体流れの理解を深める。
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Causes of Carryover |
前年度に必要な物品や旅費に使用した結果生じた端数であり、今年度にフォトレジスト(単価80,000円程度)等、実験に必要な消耗品代として使用する。
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