2017 Fiscal Year Research-status Report
Search for Quantum Liquid Hydrogen and Hydrogen - Deuteride by Strong Electric Field
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17K18762
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70251486)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 低温物性 / 超流動 / 水素 / ネオン / 弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、液体ヘリウム以外の新しい超流動体を実現することを目的とする。ヘリウムより軽い元素である水素に着目し、強電場中で水素液体が安定して存在するという理論提案に基づき、水素分子(H2)及び重水素化水素(HD)の薄膜に強電場を印加して液体状態を極低温まで保持し、超流動探索を行う。 平成29年度は基本装置である電場印加装置を準備するとともに、水素(H2)および希ガスのネオン(Ne)薄膜の弾性率測定を行った。その結果、ネオン薄膜がヘリウム(4He,3He)薄膜と全く同様の弾性異常を約5K以下の温度で示すことを見出した。ネオン薄膜はヘリウム薄膜と異なり、弾性異常発生温度が吸着量を変えても5Kに留まることから、量子相転移が存在せず系が古典的に振る舞うという結果を得た。これは弾性異常が、2次元固体から拡がった状態(気体的状態)に励起することによって起こることを示唆する。またH2薄膜では弾性異常が見られなかったが、オルソパラ変換等による実験の不備の可能性もあるため、変換が起こらないHDを用いた実験を行う予定である。 この結果から、極低温下で2次元ネオン固体にフォノンを照射して励起させることで、非平衡状態ではあるが超流動を実現できるという新しい着想を得た。更に、物理吸着を起こす物質で弾性異常を示す薄膜は全て非平衡超流動を示す可能性もある。このアイデアを検証するため、平成30年度は薄膜を励起させるフォノン源として水晶トランスデューサ(100MHz領域)と超伝導トンネル接合(10GHz-1THz)を用いてヘリウム薄膜での超流動の増強効果を検証することを試みる。これが成功した場合はネオン薄膜にて実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電場印加装置は準備段階に留まっているが、ネオン薄膜の弾性異常の発見という大きな成果を得た。更に、物理吸着を起こす物質が弾性異常を示せば、全て非平衡超流動を示しうるという、全く新しい超流動の実現方法を着想するに至った。これらの状況を考慮して、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ネオン薄膜で弾性異常を発見したことから、今後は研究推進の方向を変えて、H2およびHDの弾性異常の探索を行うと共に、超高周波フォノンで薄膜を励起して非平衡超流動を実現することを目指す。同時に電場印加による薄膜弾性の変化を実験的に調べる。フォノン生成法として、特に1THzに至る超高周波フォノン生成が可能な超伝導トンネル接合の作成を、国内の研究者の協力を得て進めていく予定である。またヘリウム薄膜においてもフォノン照射により超流動が増強される可能性があり、水晶トランスデューサの高調波を利用した実験を開始する。
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Causes of Carryover |
ネオン薄膜の弾性異常の測定に時間を要し、当初予定した物品購入を行わなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は当初予定の水素強電場印加装置の設計を変更して、吸着媒質である多孔質ガラスに一様電場を印加する装置の製作と、フォノン照射デバイスを組み込んだ超流動測定装置(ねじれ振動子)の開発を行う。次年度使用額はそれらに当てる予定である。
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Research Products
(15 results)