2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of real-time measurement method of velocity distribution function using velocity-space tomography
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17K18771
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
荒巻 光利 日本大学, 生産工学部, 教授 (50335072)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 光渦 / プラズマ分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
光渦は中心に位相特異点を持ち等位相面がらせん状に捻じれた電磁波である.ビーム断面内において,等位相面の勾配は大きさが位相特異点からの距離に反比例し,向きは方位角に依存して変化する.この位相勾配の変化にともない,光渦は断面内の位置ごとに異なる速度空間の領域の粒子と相互作用する.このことは,光渦を用いることで,波長掃引を伴わずに速度空間における粒子分布を観測できることを意味している.この特徴をドップラー吸収分光に利用して,速度空間における粒子密度分布を一度に測定するのが本研究課題の目的である.この測定法を実現するには,吸収率の空間構造を詳細に理解する必要がある. 横方向流れのあるプラズマに対して光渦吸収分光を適用した場合,ドップラーシフトの位置依存性に起因して,ビーム断面内で不均一な吸収が必然的に起こる.今年度は,実験および角スペクトル法による数値解析により,このような光渦強度の不均一構造の伝播を詳細に検討した.光渦のビームパラメータを調整して,Rayleigh長とプラズマのサイズが同程度となる条件で,吸収分光実験を行った.光渦の焦点は,プラズマ透過直後の位置とした.プラズマ透過から観測用カメラまでの伝播によるGouy位相変化の影響を取り除くため,プラズマ透過直後の光渦像を4-f光学系で観測用カメラに転送した.その結果,トポロジカルチャージの符号に依存した方向に45度欠陥構造が回転することが確認された.実験と同じ条件で,角スペクトル法による伝播計算により,実験と同様の結果を得た.このことから,吸収によって形成された欠陥構造はGouy位相変化によって回転することが明らかとなった.吸収率分布を正確に評価するには,さらに詳細に伝播の効果を取り扱う必要性が明らかとなり,プラズマ中を伝播しながら吸収およびGouy位相の変化の影響を受ける光渦について数値解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初は見つかっていなかった,伝播による光渦の構造変化という新しい現象が見つかり,実験および数値解析によってその原理に関する理解も進んでいる.これらの現象の理解は,速度空間トモグラフィーの実現に不可欠なものであるため,2019年度は多くの時間を費やすこととなった.光渦分光法の開発には,従来のプラズマ分光とは全く異なる技術が要求されており,そのノウハウを着実に蓄積している.一方で,これらは当初計画にはなかった問題のため,全体として若干計画が遅れ気味となっている.今後,より実験に近い条件で,吸収されながら伝播する光渦の数値解析を進める必要がある.これにより,吸収率分布の完全な理解を進めるとともに,速度空間トモグラフィーの実験も開始する.また,これまでの実験において,中性ガス流を測定対象とした場合,方位角ドップラーシフトが小さすぎて観測しづらいという課題があるため,より高速なイオン流計測も検討を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,光渦の伝播が観測結果に影響を与えることが明らかになってきているため,その効果を詳細に検討する必要がある.光渦がプラズマ中で吸収される際,構造欠陥の生成とGouy位相による構造変化が同時に起こっていると考えられる.まずは,数値解析により,この現象の理解を進める.これと並行して,当初予定していた速度空間ロモグラフィーの実験系構築を進める.また,これまでの実験で,方位角ドップラーシフトが小さすぎて観測しづらいという課題がある.既存の装置の排気系を改良することで,中性ガスの流速を増加させて実験を行う予定である.また,新たに高密度ヘリコン波プラズマ装置を開発し,高速なイオン流を対象とした速度空間トモグラフィー測定も計画している.
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Causes of Carryover |
これまで,既存の中性ガス流プラズマ装置を用いて,速度空間トモグラフィーの基礎となる光渦吸収分光の高精度化実験および数値シミュレーションを行ってきた.特に欠陥を持つ光渦の伝播による変形に関する問題は,当初予想していなかったため,その現象の理解に時間を費やすことで,計画全体が若干遅れてしまい研究期間を延長することとなった.来年度,高密度ヘリコン波プラズマ源を開発することで,方位角ドップラーシフトがより大きくなる条件での実験を行う.また,流速が大きい場合,位相特異点近傍の準安定原子の輸送を考慮する必要があることも明らかになっているため,新しく開発したプラズマ源を用いて詳細な検討を行う.
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Research Products
(8 results)