2017 Fiscal Year Research-status Report
行列模型に基づくファットグラフの分子生物学への応用
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17K18781
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤 博之 香川大学, 教育学部, 准教授 (50391719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋上 和弘 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (60262151)
村上 斉 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (70192771)
佐竹 郁夫 香川大学, 教育学部, 准教授 (80243161)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 量子曲線 / Landau-Ginzburg模型 / 位相的漸化式 / 振動積分 / 行列模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究においては,主に量子曲線および行列模型の基礎的側面に関する研究を行なった.本研究課題では,行列模型を用いて分子生物学の数理モデルを構築することにあり,行列模型の様々な解析手法を用いる必要がある.行列模型の研究においては,Schwinger-Dyson方程式や直交多項式による解析手法があり,それらは様々な数理モデルの解析を通じて発展している.そこで本年度は分子生物学の数理モデルの解析を念頭に,以下の研究を行なった. 行列模型のSchwinger-Dyson方程式によるアプローチの発展として,超対称Landau-Ginzburg模型の量子曲線による解析を行った.超対称Landau-Ginzburg模型のFrobenius多様体に関する研究は90年代に主に行われ,その結果はミラー対称性の研究の発展に大きく役立てられた.Frobenius多様体の解析においてはGauss-Manin系という微分方程式系が現れるが,その解はPhamの「振動積分」によって表される.本研究ではこの振動積分を位相的漸化式によって再構成し,振動積分が満たす量子微分方程式を量子曲線として再解釈できるという予想を提唱した. この研究のポイントは,量子曲線をLandau-Ginzburg模型のデータから構築したことにある.量子曲線はスペクトル曲線という可積分系に内在する代数曲線を量子化すなわち非可換化した概念である.Landau-Ginzburg模型に対するスペクトル曲線というのもはこれまで考えられてこなかったが,Phamの振動積分の半古典極限を見ると,スペクトル曲線が読み取ることができる.実際に,複素射影空間やその中の超曲面の完全交差に対するLandau-Ginzburg模型に対しては,こうして見つかったスペクトル曲線に位相的漸化式を適用すると,振動積分の漸近展開の各項が再現されることが確かめられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究では,主に量子曲線に関する新たな応用先を発見するといった研究を行い,成果を出すことができたが,分子生物学の数理モデルの解析という点においてはまだ基礎研究にとどまっているというのが現状である.実際,2017年に発表したAndersen-Fuji-Penner-Manabe-Sulkowskiの論文では,RNAのファットグラフモデルの数え上げを実行するための行列模型(RNA行列模型と呼ぶ)に対する量子曲線の解析を行なったが,本年度のLandau-Ginzburg模型と量子曲線の新たな関係は,RNA行列模型の新たな側面の発見につながるものと期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では引き続き,分子生物学の数理モデルの解析を目指して,行列模型の漸近展開に関する基礎的研究を行うと共に,その応用的側面を探る予定である.これまでの研究の進展状況では,まだ分子生物学的モデルの解析に直接的に結びついていない.その要因としては,行列模型の基礎的側面のうち,代数・幾何的側面を中心として研究の進展があったものの,数値的側面まで到達していないといった状況にあることが考えられる.実際,分子生物学の数理モデルの解析においては,解析的に解けるケースは稀であり,ほとんどが数値的に解析する必要がある.そこで,研究の推進方策として,MontecarloシミュレーションやFredholm行列式の数値解析などといった,数値的手法による行列模型の非摂動的解析にも焦点を当てる予定である. こうした研究推進目標を念頭に現在取り組んでいる研究の一つに,Yang-Mills理論のDirac演算子の最小固有値分布を,行列模型のスケーリング極限から解析するといった問題に取り組んでいる.QCDのDirac演算子の最小固有値分布問題は90年代から知られている問題であり,行列模型の応用例としてよく知られる.一方,近年の格子ゲージ理論の研究においては,多フレーバーモデルによる共形windowの解析などが行われており,格子ゲージ理論の数値解析の結果を検証する上で行列模型が役立てられると期待される.現在,Jannosy densityとして知られる,行列模型の固有値密度関数の解析を行なっており,いくつかの数値的結果が得られている. さらに,行列模型の別の解析的側面を明らかにすることを目的に,量子ホール系と複素微分幾何学との対応関係についても研究を進めており,Ricciフローなどの解析幾何的側面が行列模型の言葉でどのように表されるかについても明らかにし,RNA行列模型の解析に役立てたいと考えている.
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Causes of Carryover |
本研究課題を遂行する中で,並列計算を実行するためのデスクトップPC(MacPro)の購入を計画している.初年度の研究費のみでは購入できないPCの購入および,Mathematicaのライセンスと多コア対応追加ライセンスの購入を行うことを目的として,次年度に使用できる費用を持ち越した.
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Quantum modular forms I, II2017
Author(s)
Kazuhiro Hikami
Organizer
Indefinite Theta Functions and Applications in Physics & Geometry, Hamilton Mathematics Institute, Trinity College Dublin, Ireland
Int'l Joint Research / Invited
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