2017 Fiscal Year Research-status Report
高感度CMB望遠鏡で拓く宇宙背景放射観測の新たなチャンネル
Project/Area Number |
17K18785
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
西野 玄記 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特任助教 (80706804)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / 偏光観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙マイクロ波背景放射の偏光成分の観測は、宇宙誕生時のインフレーションの直接的な検証の手段として注目が集まっているが、その殆どの観測は直線偏光の測定に特化したものである。もう一つの偏光のチャンネルである円偏光観測については、これまで殆ど手付かずの状態であった。しかしながら、そこには宇宙初期の原始磁場の情報など宇宙論的に興味深いデータが埋まっている可能性がある。そこで、平成29年度の研究では、直線偏光の測定に特化された観測装置のデータを再解析し直すことで、宇宙マイクロ波背景放射の円偏光成分の情報を抜き出し、これまでにない精度のデータをもたらすことを目的とした研究を進めてきた。 しかしながら、本研究開始の直前に、本研究で提案していた方法と類似の手法での解析結果が別の観測プロジェクトから発表されたたため、本研究の学術的価値を高めるには当初の研究計画で検討していたものとは異なる切り口からの探索を実現する必要が生じた。さらに、観測に用いることを前提としていた装置のトラブルなどの理由も重なり、新規の測定手段を用意することとなった。 先行研究でまだ探られていない領域を探索するためには、既存のデータを再解析するだけでなく、先行研究で測定されていない周波数帯での測定、また、より低い雑音レベルによる測定を実現する必要がある。そこで、別のプロジェクトで開発されつつある新規の観測装置を本研究でも用いることができるような、新たな測定系と検出器読み出しセットアップの構築に関する準備を進めた。また、新たなデータ取得のための最低限の解析環境の用意も同時にすることで、測定データが得られた時に即座に解析を進められるようにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように、先行研究の進展状況の変化、既存の装置のトラブルなどにより、当初予定していた計画とは異なる進捗状況である。 しかしながら、新たな測定セットアップのための環境構築は進みつつあり、平成30年度においては実際の測定データを用いた研究を進められる目処が立ちつつあると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、新たな測定セットアップを使った円偏光に対する装置の特性測定とその系統誤差の評価を行う。元々の研究計画では既存のデータを再解析することが中心であったが、研究を巡る状況の変化により、新規に測定を行い、そのデータを解析する必要が生じている。そこでこれまで以上に多岐にわたる協力研究者からの協力を得られるように配慮することにより、限られた研究資源の中で最大限の進展を得られるように研究を進めていく方針である
|
Causes of Carryover |
当初使用を計画していた観測装置のトラブルにより、現地(海外)へ出張し、観測作業を行うことができなくなったため、そのための旅費を使用する必要がなくなった。また、研究計画の練り直しなどにより、高価な装置・部品なども新たに選定し直すことになり、平成29年度内の執行に至らず、物品費においても当初予定を下回った。そこで生じた次年度使用額は、新たに選定し直している、円偏光測定のための光学部品等の購入に充てる計画である。
|
Research Products
(1 results)