2018 Fiscal Year Research-status Report
高感度CMB望遠鏡で拓く宇宙背景放射観測の新たなチャンネル
Project/Area Number |
17K18785
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
西野 玄記 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特任助教 (80706804)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション宇宙論 / 円偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、宇宙誕生を探る鍵として宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の「Bモード」と呼ばれる偏光パターンの観測に注目が集まっている。原始重力波の痕跡とも呼べるこのモードについては、宇宙論的な重要性から、多くのプロジェクトにより観測が進められ、年々精度の高い観測結果が得られつつある。しかしながら、それらのプロジェクトによって測定が進められているのはCMBの偏光成分のうちの直線偏光成分のみであり、円偏光に対しては、ほぼ未開の領域として残されている。本研究は、そうした状況を打開するため、Bモード偏光測定を目指して高感度化されてきた観測装置や観測データを活用するべく、新たな解析手法を開発し円偏光成分の探索を行うことを目的とするものである。 2018年度は、過去に取得されたデータの再解析、新型受信機システムを用いた観測のための準備、将来実験における観測可能性の検討の三点を柱として研究を進めてきた。これからの観測のための準備の一環として、CMB偏光観測実験Simons Arrayのチリ・アタカマ砂漠における実験立ち上げの際には、本研究のための装置の一部を持ち込み、動作試験を行った。過去の観測データの再解析においては、装置特性や系統誤差の見積もり上重要となる測定環境に対する理解が進み、それらの円偏光測定に対する影響を考察した。また、将来実験における観測可能性に関しては、検出器製作の専門家の協力を得ながら、その実現に向けた方策の検討を行った。 当該年度中には、残念ながら公に結果を発表できるような成果は上げられていないが、そのための準備的な研究を多方面から進める事ができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように、2018年度の研究では多方面からの研究の推進を図り、一定の進展を得ることはできた。しかしながら、元々の研究計画においては、CMB偏光観測サイトにおいて実際に円偏光信号の測定試験を行う予定であったのだが、その実現には至っていない。 そうした遅れの原因の一つは、測定に利用する予定をしていた観測システムの大規模な移設・導入作業が行われていたために、当該システムの主利用目的とは外れる本研究の測定の優先度が下がってしまったことが考えられる。次年度においては、そうした外的要因に左右されない、確実に進捗を得られる研究に注力していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、これまで準備的に進めてきた研究をさらに推進し、CMBにおける円偏光成分の探索を行う。今後の研究の推進方策としては、多方面に手を広げるのではなく、確実な進捗を得ることができると思われる研究、特に、既に取得済みの観測データを用いた解析を進めていくために、解析手法の開発に関する研究を中心として進めていく計画である。また、類似の研究を進める研究者との新たな協力関係も構築できる見込みであることから、これまで滞っていたデータ解析方面の研究をスピードアップし本年度中に成果を上げることを目指している。
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Causes of Carryover |
2018年度に予定していたチリ・アタカマのCMB偏光実験の観測サイトにおける本格的な測定が実現できなくなったため、本研究のために見込んでいた長期の海外出張がなくなったことと、そのために必要とされていた測定装置等の購入が取りやめになったことから、次年度使用額が生じることとなった。 今後の使用計画としては、前年度取りやめになった観測サイトへの長期出張を行うための研究代表者と協力研究者の旅費と測定装置類の購入、さらに、データ解析における共同研究等を効率良く進めるために米国の共同研究機関への出張旅費として使用する考えである。
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Research Products
(1 results)