2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of magnets using new radiation-hard insulating resin
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17K18788
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
高橋 仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (60353372)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 耐放射線性絶縁樹脂 / 電磁石 |
Outline of Annual Research Achievements |
加速器用電磁石コイルの絶縁材として一般的なエポキシ樹脂よりも耐放射線性が高い樹脂として、これまでビスマレイミド・トリアジン樹脂が多く使われてきたが、それと同程度以上の耐放射線性を持つ樹脂として、シアネート樹脂が最近注目され始めている。このシアネート樹脂を用いた加速器用電磁石コイルを開発することが本研究課題の目的である。 初年度は、シアネート樹脂に混ぜるエポキシ樹脂の種類やその配合比を最適化することで、樹脂そのものの物性値の改善を図った。樹脂の耐熱性能の指標であるガラス転移温度を系統的に測定することで、ビスマレイミド・トリアジン樹脂やシアネート樹脂100%よりも高いガラス転移温度が得られるような、最適なエポキシ樹脂の種類と配合比、温度条件等を決定することができた。 2年目は、その樹脂を電磁石コイルの絶縁材として使用するために、プリプレグテープ(ガラス繊維布に樹脂を含浸させた絶縁テープ)の開発を行った。しかしながら、量産設備で使用するような量ではシアネート樹脂が熱暴走を起こすことが判明し、その対策が必要となった。プリプレグテープ製造業者の工場でシアネート樹脂とエポキシ樹脂とを混合させる場合、安全対策に追加の設備投資が必要となるが、元の樹脂製造業者であらかじめ混合させた製品を使用することで熱暴走を起こさずにプリプレグテープが製造できるようになった。 これにより、シアネート樹脂製プリプレグテープ製造の目途を立てられた。 今後、このシアネート樹脂製プリプレグテープを用いて、その耐放射線性の測定や、電磁石コイルの製造技術の確立を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
シアネート樹脂という新しい樹脂を電磁石の絶縁材として使用するためには、シアネート樹脂製のプリプレグテープを開発する必要がある。手塗りによる少量生産では問題なかったが、量産化のために工場の製造ラインで製作しようとしたところ、熱暴走が発生した。幸い、火災事故にはならなかったものの、その後の開発、製造には、熱暴走の抑止や万一の場合の安全対策が必要となったため、当初の研究計画の見直しが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発してきたシアネート樹脂製プリプレグテープを用いて、ビーム照射試験や、模擬コイルの樹脂含浸硬化試験を並行して実施する。これらにより、シアネート樹脂の耐放射線性や絶縁性能、コイル絶縁材としての適性などを評価し、シアネート樹脂を用いた電磁石コイルの製造技術を確立する。
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Causes of Carryover |
シアネート樹脂製プリプレグテープの開発途中で、熱暴走という新たな問題が生じ、その対策に時間がかかったため、当初予定していた試験が実施できず、そのための費用が繰り越しとなった。しかしながら、これまでの研究開発の結果、シアネート樹脂製プリプレグテープの製造が可能になったため、繰り越し金により当初予定していた各種試験を実施する計画である。
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