2017 Fiscal Year Research-status Report
生命エネルギー獲得の未解決反応から探る太古代のメタン・鉄循環
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17K18808
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
柳川 勝紀 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (50599678)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 嫌気的メタン酸化 / 鉄還元 / 水酸化鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,酸化鉄を利用したメタン酸化をおこなう微生物反応,すなわち嫌気的メタン酸化反応と鉄還元反応のカップリングする共役反応の検証を目指している.今年度はこの反応が進行することが期待される研究調査地の絞り込みをおこなった.この反応における理想的条件は,メタンと三価鉄が豊富で,なおかつ酸素,硝酸塩,硫酸塩が乏しいことであることから,鉄分に富む湖沼環境に着目し地球化学分析を実施した.その結果,還元的な湧水が流れ込む湖沼環境において,本研究に適した物理化学的条件が形成されていることが明らかとなった.その堆積物表層では湧水に溶存している二価鉄が酸化され,水酸化鉄の絨毯様構造が形成されており,その水酸化鉄は堆積物深部にまで分布していた.また,深部堆積物の嫌気環境では微生物起源と考えられる炭素同位体比が低いメタンも豊富に存在していた.そして,本研究で検証を目指すメタン酸化-鉄還元反応が熱力学的に好ましい環境,すなわち水酸化鉄とメタンの共存する領域は数十cmに渡って広がっていた.また,表層で沈殿した水酸化鉄の一部は,堆積物中において続成作用を受け,深部では菱鉄鉱に変化していた.この菱鉄鉱は微生物による鉄還元反応により生じた二価鉄とメタン酸化反応で生じた二酸化炭素から生成・沈殿した可能性も示唆される.今後,この環境下で進行する微生物反応を解明するための分子生態学的解析と生物地球化学解析を進めていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物学的解析までは実施できなかったが,申請研究を進める上で絶好の調査地を発見することができた.この場所はサンプリングも非常に容易であり,次年度からの研究は順調に実施されることが期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
調査地に生息する微生物の群集組成を決定するための解析を実施し,鉄依存的メタン酸化に関与する微生物系統群候補を選出する.特にアーキアを対象とした詳細な遺伝子系統解析や機能遺伝子解析,さらにリアルタイム定量PCR解析も実施することで,標的微生物の分布とその存在量を明らかにし,メタン循環への影響を推定する.
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Causes of Carryover |
研究調査地を決定するための計画以上の時間を費やしてしまい,今年度は微生物群集構造解析など微生物学実験に着手することができなかった.しかし,時間をかけた分,より理想的な調査地を見つけることができたと言える.想定以上にサンプリングも比較的容易な場所であったため,次年度からは滞りなく研究が進むことが期待される.今年度実施できなかった分子生態学的解析や顕微鏡解析を中心に実施し,標的微生物系統群の分布,存在量,組成を明らかにしていく.
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Research Products
(3 results)