2017 Fiscal Year Research-status Report
微小炭酸塩鉱物の局所高精度同位体比分析による地球惑星表層環境研究への挑戦
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17K18814
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
牛久保 孝行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (10722837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤谷 渉 茨城大学, 理学部, 助教 (20755615)
池原 実 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (90335919)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 探査念 / 酸素同位体 / SIMS / 耳石 / 有孔虫 / 隕石 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチコレクター型二次イオン質量分析計CAMECA IMS 1280-HRを用いて炭酸塩の酸素2同位体比(18O/16O)と酸素3同位体比(18O/16O, 17O/16O)の局所分析法を確立した。直径約10ミクロンのイオンビームを用いた分析では、d18O値で±0.3パーミル、D17O値(d17O-0.52×d18O)で±0.5パーミルの分析精度を得た。また、直径約3ミクロンのイオンビームを用いた分析ではd18O値で±0.7パーミル、D17O値で±1.0パーミルの分析精度を得た。局所同位体比分析法の確立と並行して炭酸塩試料の研磨法の開発にも取り組み、複雑な形状を持つ魚類の耳石試料や1mmに満たない有孔虫炭酸塩殻を樹脂包埋によって直径1インチの樹脂円盤に固定し、削り出し量を調節しながら鏡面研磨する方法を確立した。これらの成果の一部は国際会議(PICES 2017 Annual Meeting at Vladivostok, Russia)や国内研究会で報告している。 手法の確立と並行して分析試料の検討と観察を実施した。研磨と分析点決定の難易度を考慮して、同位体比分析の試行的な研究課題として(1)クロマグロの耳石の酸素2同位体比分布の解析 及び(2)隕石(炭素質コンドライト)試料の炭酸塩粒子の酸素3同位体比と形態の比較研究を選定した。両研究ともに、一部の研究試料の酸素同位体比分析が終了し、継続して研究を行うに足る有望な初期データが得られている。これらの成果は2018年度中に開催される国際会議で発表予定である。さらに、会議での質疑の内容や参加者との議論を踏まえた上で論文としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
局所酸素同位体比について、目標としていた分析精度を達成できた。試料準備法についても、魚類の耳石や有孔虫の炭酸塩殻等、生物起源の柔らかく脆い炭酸塩試料を樹脂包埋し平滑に研磨する方法が確立できた。魚類の耳石や隕石試料の分析研究を開始し、一部の試料についてデータを取得する段階に到っている。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマグロの耳石試料と隕石の炭酸塩試料の同位体比分析を継続して行い、クロマグロの生態や小惑星での水質変成過程に関する研究を推進する。 南太洋産有孔虫の炭酸塩殻試料を用いた海洋(古)環境研究に着手する。 炭酸塩の局所炭素同位体比分析法を確立させ、同一炭酸塩試料から酸素同位体比と炭素同位体比の独立した二つの情報を得る事で、環境変動や炭素循環、炭酸塩を形成した流体物質の起源を詳しく議論出来るようにする。
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Causes of Carryover |
生物起源の炭酸塩鉱物の研磨が既存の方法の応用で可能である事が判明し、研磨テスト用の消耗品費を大きく抑制出来た。また、研究協力者の成果発表に関しては別の研究経費から支出する事となり、初年度の成果発表費用の支出が少なかった。 繰り越した研究費は本年度の分析試料作製の為の消耗品購入のほか、国際会議の場で発表する為の費用として積極的に活用し、本研究の成果が広く国内外に周知されるように努める。
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Research Products
(2 results)