2017 Fiscal Year Research-status Report
Can we predict an unprecedented disruption of the equatorial stratospheric circulation in 2016?
Project/Area Number |
17K18816
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
河谷 芳雄 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 主任研究員 (00392960)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 真吾 国立研究開発法人海洋研究開発機構, シームレス環境予測研究分野, 分野長 (50371745)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 赤道準2年振動 / エルニーニョ / 海氷 |
Outline of Annual Research Achievements |
中間圏・下部熱圏を含む中解像度及び高解像度の大気大循環モデルJAGUARを用いて、2016年に観測された成層圏QBO崩壊現象の再現実験を行った。中解像度では再現されなかったが、高解像度モデルではQBO崩壊の再現に世界で初めて成功した。 2016年1月4日から2月1日まで1週間おきに計5回、1実験あたり連続40日間分の再現実験を実施し、QBO崩壊イベントの生じる過程を調べた。QBO崩壊イベントが生じた30-60 hPaの範囲では、それらどれもが観測値とよく一致した。本結果は、世界中の気象機関等がイベントを予見できなかったことと対照的で、より精緻なモデルを用いていれば、少なくとも1か月以上遡って予見できた可能性があることを示唆する。 再現実験結果を統計的に分析した結果、崩壊の直接の原因の特定に成功した。すなわち、北半球亜熱帯成層圏の東西風の構造によって屈折しながら伝わったロスビー波が、赤道成層圏の厚さ数km程度の狭い高度範囲に集中して作用していた。成果は論文として発表した(Watanabe et al. 2018)。 次に数十年に亘る再解析データを用いてQBO、エルニーニョ南方振動、海氷の関連性を調べたところ、2016年はQBO西風位相、エルニーニョ、海氷減少が同時に起こっている特徴的な年であることが分かった。MIROC気候モデルを用いたアンサンブル実験から、エルニーニョと海氷減少がQBO崩壊を引き起こすロスビー波の生成と赤道方向への伝播に重要であることが明らかになった。成果は論文として発表した(Hirota et al. 2018)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度であるが、気候モデルを用いた実験がスムーズに行われ、再解析データの解析も進んだ。観測史上初のQBO崩壊現象が気候モデルで再現できるかどうか挑戦する課題であるが、初年度に再現に成功し、モデルデータ解析及び再解析データを組み合わせて、そのメカニズムも明らかにすることができた。成果が2本の論文として発表され、当初の計画以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
更なる数値実験を行い、QBO崩壊現象がどの程度前から予測可能なのかを調べる。また地球温暖化にともない海氷が減少するため、将来気候のエルニーニョ時に同様なQBO崩壊現象が起こる可能性がある。世界の他機関のモデル解析を含めて、調査を継続する。
|
Causes of Carryover |
今年度は気候モデル実験を行い、モデルデータ、各種観測データ解析に取り掛かり、成果を出すことができた。計画的に使用したが、大容量ディスク装置を当初予定より少額で合算で購入することで物品費が抑えられた。また論文は出版されたが、それに伴う研究発表とその他経費は、今年度分としては抑えられた。来年度は本科研費を推進する為の海外研究協力者の招聘旅費・謝金、来年度の実験に必要なディスク装置、及びこれまでの成果の宣伝及び今後得られる成果発表の為の海外旅費に充てる。
|
Research Products
(6 results)