2017 Fiscal Year Research-status Report
The challenge of an alternative lubrication material synthesizing by multiplying DNA under PCR method
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17K18818
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野老山 貴行 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20432247)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | PCR / 摩擦 / トライボロジー / 潤滑油代替材料創製 |
Outline of Annual Research Achievements |
人類は食料・燃料などを自然界から搾取することで生活・経済活動を行ってきた.この方式は狩猟時代と基本的には同じである.ハイブリッド・水素・電気自動車など革新的な燃料利用による化石燃料の使用量削減が起こったとしても,自動車内で使用される軸受等への潤滑油の使用量は減少しない.2015年7月に定められた「エネルギー供給構造高度化法」により日本国内における原油精製量は減少するが,潤滑油の精製量も減少するため,将来的に潤滑油不足・国外から輸入という構図に移行してしまう.そこで潤滑油代替材料として植物油が期待されているが,広大な栽培面積が必要であり,収穫量の変動,抽出ゴミの発生などが懸念される.潤滑油代替材料としてゴミの排出が無く,精製量を人為的に制御可能で,自然界からの搾取を必要としない物質の創製が求められている.そこで,本研究では植物由来DNA断片の潤滑油代替材料としての可能性を検討するため,植物由来DNA含有水溶液を作製し,ガラス基板及びガラス球を用いて摩擦試験を行い,DNA含有の有無が摩擦係数減少に及ぼす影響について明らかにする.DNA断片の量を増幅する方法としてポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)法があげられる.この手法は主に目的とする微量のDNA断片を大量に増幅する方法で,遺伝病の診断などに利用されている.本手法の優れた点は予め目的とするDNAの型となるプライマーを用意し,100℃以下の温水の温度変化を繰り返すことでDNAの量を増幅可能な点である.電気自動車は近年家庭用電力としても使用できるほど豊富に電流を供給できることから,ヒータを用いてPCR法を行うことが可能であると考えられる.潤滑油代替材料を自動車自身が作製し供給することでメンテナンスフリー化が可能になるものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたブロッコリーから抽出したDNA断片材料による摩擦試験から,摩擦係数の低減効果の確認(0.12から0.09へ減少)が行われ,DNA断片材料が従来潤滑油の代替材料として使用できる可能性は明らかにされている.また,DNA断片材料を既知の条件から増幅するためPCR装置の購入と使用方法の確認が終わり,代表植物として全塩基配列が判明しているシロイヌナズナを用いること,植物の細胞膜から核酸を取り出し,DNAを抽出するための手順及び材料手配まで終了しており,実験が進められている.
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Strategy for Future Research Activity |
DNA断片をPCR法により増幅することは生化学分野においてある程度確立されているが,摩擦面内におけるDNA断片の耐荷重能については明らかにされていない.また,DNAの材料表面への吸着力,吸着に寄与する極性基の種類,吸着される側の材質との組み合わせは重要な因子と位置づけられる.DNA断片の摩擦面吸着のその場観察の実現は本研究において最重要項目と考えられる.そのため,研究代表者らがこれまでに提案したフーリエ変換型赤外分光(FT-IR)その場分析装置を用い,接触面近傍をエバネッセント光により赤外吸収測定し,吸着に寄与する極性基の特定を試みる.この手法は赤外透過可能なプリズムに赤外光を導入し,プリズムと摩擦面間の界面にて全反射を25回繰り返し,感度を増幅させて赤外吸収を得るものである.装置には液体を保持する機構が備え付けられており,今回使用するDNA断片水溶液中摩擦試験に最適である.次にDNA断片の吸着を阻害する要因を明らかにするため,摩擦面内に紫外線を導入し,吸着基あるいはDNA断片の構造を破壊する要因について明らかにする.研究代表者らの作製した紫外光導入摩擦面その場観察試験機を用いて入射する紫外線波長と摩擦係数との関係を得る.
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Causes of Carryover |
当初予定していたPCR装置には紫外線照射及び塩基対長さの推定装置が組み込まれていたが,本研究を遂行するに当たり,目的とする塩基対を高効率に増幅するためには,汎用機として当初予定した機種よりも安価な装置での実現可能性が明らかになったため,次年度使用額が生じた.しかし,DNA断片が摩擦面内に吸着する様子をin-situにて測定するための手法として532nmレーザ光入射による塩基対の摩擦面内その場観察を今後行うため,レーザ発信機を購入しなければならず,次年度使用額をこれに充てる予定である.
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