2017 Fiscal Year Research-status Report
マランゴニ対流を利用した気液界面での革新的二酸化炭素吸収分離への挑戦
Project/Area Number |
17K18835
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小宮 敦樹 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (60371142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡島 淳之介 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (70610161)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 二酸化炭素吸収 / アミン溶液 / イオン液体 / 気液界面 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,複雑現象として取り扱われてきた気液界面近傍における二酸化炭素吸収分離過程の革新的促進化を目的としている.具体的には,マランゴニ対流を利用したこれまでにない高吸収能を有する二酸化炭素吸収分離法の実現のため,気液界面での二酸化炭素吸収過程を伝熱工学的かつ流体力学的見地から測定し,濃度場情報と流れ場情報の関連性を精緻に捉え評価する.研究初年度は,まず既存の高精度可視化干渉システムに改良を施し,三次元流れ場計測を可能とする可視化システムを構築した.光学計測システムに可動部を有する機器を組み込むため振動等の問題が生じたが,気液界面に生じる二酸化炭素の吸収過程を,2つの平面における流動場と濃度場を同時観察できるシステムを構築した.これにより,流動場情報と濃度場情報の関連性評価が可能な実験データの取得ができるようになった. また,この可視化システムを用いて二酸化炭素-吸収液の気液界面における吸収過程可視化実験を実施した.吸収剤は水および第二級・三級アミン溶液を用い,アミン溶液の種類による違いを定性的に評価した.この結果,二酸化炭素の吸収過程は拡散支配の段階と対流支配の段階の二段階に分けることができることがわかった.この二段階の分離は,吸収液であるアミン溶液の種類によって大きく異なることも実験から明らかとなった. これら可視化実験データの効率的処理のために,全ての情報をモニタ上で同時に確認できるソフトウェアの開発に向けても検討を行った.必要とされる情報は画像処理をすることで視覚的に伝わることから,リアルタイム観察に向けて画像処理に要する時間を短縮させるプログラムの検討を行った.これについては次年度進めていくこととした
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画に照らし合わせて,おおむね計画通りに研究を進められたと判断する.本年度は大きく「同時測定システムの改良」「吸収現象可視化実験」「ソフトウェアの開発」の実施を計画しており,それぞれにおいて当初計画していた内容までほぼ到達できたといえる.同時測定システムの改良においては,当初の改良計画の通り,3つのカメラを可視化干渉システムに取り付け,2つを流動場可視化用に,そして1つを濃度場観測用にし,懸念事項であったそれぞれのカメラの画像取得の同期もほぼ問題なく克服することができ,同時計測系を構築することができた.また,吸収現象可視化実験においては,当初の計画では吸収液を水,アミン系水溶液,さらにイオン液体としていたが,本年度は水とアミン系溶液に限定し,アミン種の違いによる吸収能の違いを定量的に評価した.得られた知見はほぼ予想をしていた範囲であったが,定量的評価の観点から言えば,アミン種の違いによる吸収能の違いは,想定していたよりも顕著に表れた.ソフトウェアの開発にあたっては,画像処理の解析時間短縮化に向けた方法を決定し,後はそのプログラムを組み込むのみとなった.これらの結果に示すように,計画していた装置改良と実験を実施することができ,計画通りの進展度合いとなった.以上の理由により,本年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究は9か月間の研究期間にも関わらず進展がおおむね順調であったことから,今後も研究計画に沿って研究を推進していく予定である.本研究における一番の懸念事項であった同時計測システムの改良が滞りなく終えることができたことから,次年度は本年度に検討したソフトウェア開発を直ちに行い,二酸化炭素吸収可視化実験に集中していく予定である.海外研究協力者とは既に実験データの共有化をしていることから,引き続き定期的な会議を行い,実験のパラメータ設定を行っていく.会議はSkype等の遠隔会議を考えている.また,次年度はマランゴニ対流を付加させた状態での実験を行う予定となっており,実験頻度が増えることから大学院生の雇用を行い研究の進展に遅れが生じないようにする.マランゴニ対流を付加した実験では,本年度得られたアミン種と吸収能の関係が大きく変わる可能性がある.その場合は,流体工学を専門とする海外研究協力者との会議を綿密に行い,追加実験のパラメータ設定を行うこととする.
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Causes of Carryover |
本年度行ってきた同時測定システムの改良には3つのカメラと,可回転シリンドリカルレンズデバイスの製作のためのステッピングモータが必要であったが,研究代表者の研究室に既に使用を終えた機器が保管されており,それを用いることでシステムを改良した.これにより研究費の効率的使用を行った.そのため,一部研究費を次年度使用することとなった.研究の進捗次第では,さらに高解像度な計測を求め,高機能機器の購入も行う予定であるが,本研究で明らかにすべき点から外れないように機器の購入は柔軟に対応できるようにする.また,交付申請書に記載のように,平成30年度においても数多くの実験を行うことから,消耗品等を計上しており,これらについては計画的に執行を行う予定である.機器購入・実験消耗品以外にも,次年度以降は謝金が必要となる.これはパラメトリックな実験の実施に伴う大学院生の雇用経費である.また,得られた知見等は国内外の研究会やシンポジウムにて発表を予定しており,必要に応じた旅費の支出も計画している.
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