2017 Fiscal Year Research-status Report
Thermal functionalization of cellulose nanofibrils by phonon engineering
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17K18837
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 淳一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40451786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 高志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (10548522)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | セルロースナノフィブリル / 熱伝導 / フォノンエンジニアリング / 縮流効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルロースナノフィブリル(Cellulose Nano Fibril, 以下CNF)の熱輸送特性の制御を目的として、これまで申請者が開発してきたフォノンエンジニアリングを実践するための材料合成,理論/数値計算,物性評価技術を三位一体で連成したプラットフォームを活かして研究を進めた。材料合成においては、CNF材料の束からなるフィラメントの作製を行った。まずそのために、流動の縮流効果やCNF間の化学的相互作用を変えられるチャネルを作製した。本チャネルでは、TEMPO酸化触媒によって解繊されたCNF分散液を流動させるが、横から塩を注入し拡散させる機構を備えており、縮流によって配向させたCNFをゲル化して統合し、最終的に乾燥させることでフィラメントを得る。この際の塩の種類を変え、自己組織化の時空間スケールを制御することによって、CNF間の化学結合状態が調整できるようになった。また、原材料のCNF分散液にカーボンナノチューブを混ぜたり、ゲル化した後にポリエチレングリコール溶液に浸すことによって、フィラメントの複合化にも成功した。理論/数値計算においては、CNFの分子シミュレーションモデルを構築した。セルロースの動力学を再現する適切なポテンシャル関数を選択し、CNFの分子動力学計算を行った。CNFの集合体の構造や機械的特性を既報や実験の情報を比較することにより、モデルの妥当性を検証した。これらによって、CNFあるいはその集合体の熱輸送計算を行う準備が整った。物性評価に関しては、電子顕微鏡観察によるフィラメント全体や断面形状の評価、重量計による密度の評価、X線小角散乱による配向度の評価などを行った。さらに、引張試験による機械的強度計測を行った結果、配向および統合による高い機械的強度と、塩の種類や複合化の種類による顕著な影響が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流動の縮流効果による配向CNFフィラメントが作製できるようになり、塩によるゲル化や他の材料との複合化により材料の物理化学的構造に変化を与えられるようになった。また、分子動力学モデルの構築も進み、構造や物性評価もできるようになっていることから、CNF材料のフォノンエンジニアリングの実現に向けた技術開発が順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度開発した合成技術を駆使して様々なCNFフィラメントを作製し、それらの熱伝導率を評価する。熱伝導計測は定常から非定常までいくつかの手法によって行うが、本研究では主にT型ジャンクション法を用いる。本手法では、2つの熱浴間に架橋したプラチナワイヤーの中央にCNFフィラメント試料の片端を熱的に接合し、プラチナワイヤーを定常的にジュール発熱させた際のCNFフィラメント試料による温度低減を通じて熱伝導率を計測する。並行して、前年度の分子シミュレーションモデルをさらに高度化し、精度を向上するとともに、マルチスケール構造や熱物性を取り扱えるようにする。特に、複数のCNFがイオンや水素結合を介して接触・接合した際の界面熱伝導の計算を重点的に行い、CNF集合体のマルチスケール計算に発展させる。計測する熱伝導率と分子動力学による解釈を繋げるには、前年度よりさらに詳細な構造評価が必要となる。そこで、構造解析(X線散乱、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡)、分子量測定(示差熱・熱重量測定)、分光測定(ラマン散乱、動的光散乱、近接場赤外吸収)などを広域に行い、CNFレベルでの構造およびそれら表面の結合や化学状態を明らかにする。これらの計測結果と分子動力学計算を合わせて、塩の種類を変えたとこに生じる物性の変化のメカニズムを説明し、材料合成にフィードバックする。前年度の最後に行った実験より、CNFフィラメントに外力を与えて構造を変化させる手法の有用性が見出されており、化学種、流動特性、複合化と併せて、原理原則にもとづいたパラメータ探索を行う。以上の計算と実験を繰り返して、CNFのミクロな構造から、集合体の配高度や空隙率などのマクロな構造までの「多階層アーキテクチャ」を創製することにより、多階層スケールのフォノン輸送(CNF内⇒CNF間⇒CNF集合体)を相補的に制御して熱機能化を実現する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は2万円程度と低額であり、無理に調整して0円とするよりは、次年度に有効活用する方が良いと考えたため。
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Research Products
(2 results)